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ロボコップのnoteのネタバレレビュー・内容・結末

ロボコップ(2014年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

2028年、巨大企業オムニコープ社がロボット技術を一手ににぎる世界。米デトロイトで愛する家族と暮らす勤勉な警察官アレックス・マーフィーは、勤務中に重傷を負い、オムニコープ社の技術によりロボコップとして新たな命を得る。驚異的な力を身に付けたアレックスだったが、そのことから思わぬ事態に直面することとなる。

1987年のポール・バーホーベン監督作の傑作SF「ロボコップ」のリブート版。
基本設定はそのままだが、描き方が違う。
オリジナルの根強いファンも多く、賛否両論だが、コレはコレで良さがある佳作である。

冒頭からアメリカ本土ではなく中東でアメリカ製ロボットが人間を拘束し、平和を維持する様子が描かれる。
凶悪犯罪撲滅を徹底するために人間性は必要か否か?の報道と議論。
犯罪大国アメリカにこの技術を導入するにはどうしたらいいか?
「人間と機械を合体させればいいんじゃないか?」とロボット産業の人気取りのために作られるロボコップ。

オリジナルは自律型ロボット開発が上手くいかない企業が、人間をベースに温情と判断力の優れたロボコップを作るのだが、時代の進んだ本作の方が現実に寄せている。
少し先の技術なら可能かもと思わせるリアルさがある。

主人公マーフィーはヒーローというより、あくまで一警察官で一父親。
オリジナルのロボコップは記憶がない状態から徐々に記憶を取り戻し、人間性に目覚めるのが感動を読んだが、本作は最初から記憶も自意識も残っている。
「何も残ってないじゃないか」と脳と肺と手しか残らぬ残酷さに「殺してくれ」と言う悲痛な叫びが痛々しい。
「君の妻と子のために助けた」と科学者の言葉にほだされ、犯罪撲滅のために(企業の宣伝のために)戦うロボコップ。

しかし犯罪捜査に人間味はいらないと、薬による「調整」で人間性を薬によって奪われる。オリジナルとは逆の展開である。

本作のロボコップはルックスとアクションがカッコいい。
ボディを黒にしたことでバイザーがガシャンと下がった姿は「ナイトライダー」のAI車ナイト2000のように暗闇に光る赤いラインが映える。
戦闘モードで銃を片手で撃ちながらバイクを駆る姿はマシーン版のバットマンだ。
オリジナルと比べ、動きが速すぎるという意見もあるかもしれないが、既に現在は二足歩行のロボットが走り回る時代なのでスピード感は必要だ。

街中の監視カメラや携帯GPSデータと接続して凶悪犯を検挙するのも今どき。
功績を収めて次第に市民から賞賛を集めていくマーフィー。
彼のおかげでデトロイト市の治安は劇的に改善。
世論も治安維持にはロボットを導入すべきという法改正に傾き始める。

しかし、ずっと会えずにいた妻と再会した途端、マーフィーの制御プログラムは崩壊。
昔の記憶が戻り、彼は自分を瀕死の状態にした麻薬組織を壊滅、さらには罠に嵌めた汚職警官を追い詰める。

本作の難点をまず挙げるとするならば、倒すべき敵が弱い。
オリジナルではマーフィーを殺そうとした犯罪組織はかなり強かったが、本作ではあっという間に壊滅。
本作の真の敵は、ロボコップを作ったオムニコープ。
マーフィーは企業の金儲けに利用された生贄である。
一応は犯罪撲滅に一役買っている世の中のために尽力する企業であり、根っからの悪党ではないため、残念ながらカタルシスが少ない。

マイケル・キートン演じる利益と利権を優先して暴走しただけだし、ゲイリー・オールドマン演じる科学者も研究費を掴むためには、無理な指示でも我慢してやらざるを得ない哀れな被雇用者。
オムニコープの実態は企業や組織で働く者「あるある」なのだ。
目的のためにマーフィーや家族の人権を無視するため、あまり同情はできないのだが。

クライマックスでは法案が改正され、ロボット導入が可決。
広告塔として用無しとなったマーフィーはオムニコープに殺されそうになる。
そこで改心した科学者に助けられたマーフィーはオムニコープに乗り込んで社長を自分の殺人未遂で逮捕しようとするが、警備ロボットや社員らの抵抗に合う。
ボロボロになりながら戦い、屋上に社長を追い詰めるマーフィー。
社長の制御プログラムに抗い「自分は機械ではないのだ」とマーフィーは社長を射殺。
企業の束縛が無くなったマーフィーは、妻子と再会して再出発する。

人間と機械の境界線はどこなのか?というテーマ、家族に対する愛情と人間であろうとする意思はオリジナルと同じで旧作ファンへの目配せもある。

だが、本作の監督が描きたかったのは、正義の名の下に過剰に武装化する銃社会アメリカへの批判だろう。

ロボコップの悲劇とは裏腹に、サミュエル・L・ジャクソン演じるニュースキャスターのノヴァクは、彼の推すオムニ社の罪が暴かれてもなお、声高に強いアメリカ万歳を叫ぶ。
そのプロパガンダは強烈な皮肉として聞こえてくる。

そもそも「無敵ロボが悪人をガンガン殺す」というのは現在では荒唐無稽。
わざわざリブートするからには旧作と同じものを作ってもしょうがない。
産みの苦しみを感じる作品だ。

犯罪を撲滅するには、人間性は必要か否か?犯罪者よりも武装するべきか?
情報を駆使するロボコップの捜査方法には、解決策があるように見える。
ロボコップが負けてもいい。全く違う展開でもいい。
その議論がされれば、オリジナルに並ぶ傑作になったかもしれないと個人的には思うのだが。
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