アズマロルヴァケル

アンダーテイカー 葬る男と4つの事件のアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

3.8
内容が違うのに良作だった映画

クリスマス前、街に4人の男女がいた。中年の黒人の男チャーリーは一人寂しげに街で暮らしていた。よそ見運転をしたせいで妻を亡くしてしまい、絶望の末に自殺をしたいのだが、ある理由から自分で命を絶とうにも出来なかった。チャーリーは路上にいたレクサスというLGBTの男性に出会う。チャーリーはレクサスに唐突に自分を拳銃で殺すように依頼したが、突然のことだったのでレクサスは怒って帰っていった。

ストリッパーでシングルマザーのローズは植物状態の息子を持ち、治療費のためにお金を稼ぐのに必死だった。アパートで犬を飼っていたのですが、何故か犬は行方をくらましていた。孤独の末にローズは街中に張り紙を貼ることにした。

葬儀屋のクワーティはその犬を牽いてケガをさせてしまう。クワーティはアパートで犬を保護し、暫くは面倒を見ることにするのであった。

初老の男性ジャックはある男性の罪を庇ったことから25年間も刑務所に服役し、出所から暫く経っていた。ジャックには
妻子がいたものの妻には先立たれ、娘はストリッパーで働いてるとその男性から知り、ジャックはそれを知ってストリッパーで働いている実の娘、ローズに接触するのであった。


この映画はもう耳に入れている人もいると思うのだが、実は「新クライモリ」でお馴染みのAMGエンタテイメントがミステリー映画として発売した作品なのだが、中身はシリアス路線の重厚なドラマ作品で、主演は強いて言えばエディ・レッドメインというよりもジェシカ・ビールと言った方がいい。そもそもエディ・レッドメインよりもこの映画の製作にもまわっているとフォレスト・ウィテカーやレイ・リオッタが重要な役ではある。

中身としては全編に渡って4人の孤独な心を人間描写で映し出す一方で、後半からはジャック以外は再生に向けて恋の予感を芽生え出すかのような微笑ましいラストになっており、非常に豊かな映画ではあった。

感動するのは実にジャックのドラマ描写だろうか…。罪を庇ったことで人生の半分を代償に刑務所に入り、妻を亡くして娘に会いに行ったものの、娘に突き放されてしまう。それでもラストに向けた彼の行動というのは実にホッコリというか切ないと言わざるを得ないだろう。

チャーリーに関しては実は先にあらすじをざっと書いているのだが、チャーリーの職業柄をせっかくラストまで伏せているのに配給会社がネタバレしたのに台無しに…本当に残念ではありました。ただ、結果的に救いのある結末にたどり着いたことは安心感があった。

でも、多少半オムニバス形式のような構成なのでちゃんと関連性はあるのだが、ちょっと描写的に薄いところもみられたが、良作ではあるので邦題やジャンルを無視して「騙された」と思って一度見た方がいいだろう。