ノットステア

瀬戸内海賊物語のノットステアのレビュー・感想・評価

瀬戸内海賊物語(2013年製作の映画)
3.3
○感想
面白かった。最後ちょっとシラケてしまったり、胸糞悪いイキり野郎も出てきたりするけど。
余白多めでのんびりと話が進む感じがした。冒険がなかなか始まらない。ちょっと前半だらけてる。
冒険。ワクワク感はあった。たまたまとか都合良すぎなところもあったけど、子どもが考えて進むっていうストーリーだからギリOK。

どこの国でも海賊=自由。
自由を愛する誇り高き海の侍、村上武吉
自由を守るために戦い続けた村上武吉

時代劇かなと思ってたけど、そんなシーンは冒頭のほんのちょっとだけだった。

以下、ネタバレあり。










フェリーの路線廃止に関する集会が何度か開催される。
フェリの業者の人(阿藤快)と町長が説明をする。
納得できない人が当然いる。
立場によって考えは当然異なる。
利益のなかったフェリーを修理する金はない。すべてのフェリーがなくなるわけでは無いから、少し遠回りにはなるが、交通の便がなくなるわけではない。
フェリーがなくなれば運送料が増え、値上がりし、商売がうまくいかなくなる。
この島で稼ぎを見込めないなら島を出ていかなければならない人もいる。島にとっては損失ではないか。
醤油を作っている自分の父も引っ越しの危機。つまり、自分も引っ越しの危機。主人公の楓(小6)は集会に乗り込む。訴えかける。
阿藤快演じるフェリー会社の人が「クソガキやなぁ」という。それはないね。酷いね、って思ったわ。これは。

中村玉緒演じる楓の祖母が放つ言葉が印象的だった。
「ときには無茶して途方に暮れるのもいい。そんくらいでないともともとそこには希望ってもんがない」「うじうじせんと、突き進んだらええ」「突き進むのが」「アンタらしさや」

楓が集会に乗り込んだ話を仲間の学と冬樹は親から聞く。
二人に力が湧いてきたような描写は良かった。

葵わかな演じる愛子は、何か事情を抱えてるイキったクラスメイトって感じだった。けれど嫌悪感はそこまでなかった。
それに対して、愛子の兄(金髪)とその友人(タンクトップ)がいけ好かなかった。何歳の設定?
スポーツカーを乗り回す。小6に向かって空き缶を投げつける。投げ返されてサイドミラーにヒビが入る。
いざ宝を見つけに行くって時に、ボートで邪魔して地図を奪ったり、宝を目前にして奪おうとしたり。小6で空手経験者の冬樹にナイフを使ったり。超小物がイキリ過ぎてて気持ち悪かった。


和田竜『村上海賊の娘』は映画化されないのかな、、、小説を読んだわけでもないけど、観てみたい。



○都合良すぎなところ
・宝が眠る在り処を示した地図や笛が残ってるところ。箪笥にカラクリがあり、わからないように隠してある。よく捨てずに残してたわ。
※地図だけでは宝の在り処はわからず、笛に刻まれた記号を紙に写して重ねなければならない。この仕組みは面白かった。魅力的だった。

・洞窟の仕掛け。
石が倒れてくる。普通に誰かしら死んでもおかしくない。
矢を放ち、小さい穴に突き刺すことができれば橋が降りてくる。無理。
宝を見つけてから脱出するには道具が必要。楓たちが分けていつも持ち歩いてた石がハマる。でもそれだけでは足りない。愛子の兄の首飾りがちょうど不足していた道具だった。なんでちょうど来てるん?なんでちょうど持ってるん?

・洞窟から脱出。流れが早い。碇を外しに行った人は戻れないかもしれない。危険を顧みず、碇を外す楓。すぐにボートに戻るわけではなく、仲間と分け合った石を取りに洞窟へ戻る。えっ???

・子どもたちがずぶ濡れで宝を持ち帰る。宝箱の中に宝はなかった。
感動する大人たち。え?危険を冒したこと注意せんの?
フェリーの修理を前向きに考え直しちゃう阿藤快。急に情に脆くなっててシラケた。

・宝はあるから楽しいのに、、、と思ったら宝箱のカラクリで隠されていただけ。祖母の中村玉緒だけは気づいている。気づかずに捨てられそう、、、



○呪術師の労働モデルを思い出した。ちょっと違うかもしれないけれど。以下引用

頑張れば報われるわけじゃない。一度足を踏み入れ(させられ)てしまえば、もうこの思考パターンからは出られない。問題があると感じていても、それを解決する余裕や想像力は過酷な労働が削り取っていく。
高島鈴「第2回 罠の外を知っているか?――『呪術廻戦』論(2)」
https://www.webchikuma.jp/articles/-/2416

日々の労働がなくなるわけではない。主人公楓の父の場合は醤油づくり。日々の労働に加えて、フェリー廃止の説明会(集会)に参加し、どうにか考え直してもらうよう懇願する。解決策はない。当然だが、立場によって異なる考え。かといって他の方法を考える時間も実行する時間もない。余裕がない。
結果的に問題の解決に近づいたのは子どもたちだった。(宝はあったから。祖母の中村玉緒が気づいていたから、感情でフェリー業者を動かせなくても、金銭で解決できたのではないかと思う。)集会で話し合うだけの思考パターンから出られなくなった大人たちではなく、別の手段を選択した子どもたち。
自分の子たちがどんな危険な行動をしているかも把握しきれていない。把握していても止められない。
理想は子どもに同行することだと思う。子どもたちに進みたい道を進ませつつ、安全を確保してあげる。こんな大人が理想だと思う。ただし、そのような大人は高島鈴さんが言うように、「怠慢」だと言われるだろう。



○『瀬戸内海賊物語』ホームページ。ストーリー
日本最強と恐れられた大海賊「村上水軍」の伝説の財宝探しが今、はじまる!
海賊の血を引く少女が探す、村上水軍の財宝とは!?
戦国時代、日本にはいくつもの水軍が存在していた。なかでも最強といわれた村上水軍は、あの織田信長を撃退し、豊臣秀吉にも与することなく「自由と海」を愛していた。そんな海のサムライたちを束ねたのが、瀬戸内の海賊大将軍・村上武吉だった。

そして現代。武吉の血を引く少女・村上楓(柴田杏花)は、代々伝わる醤油屋を営む父・達也(内藤剛志)、母・春子(石田えり)とともに、瀬戸内海を臨む美しい島に暮らしていた。クラスメイトの学(伊澤柾樹)、冬樹(大前喬一)と一緒に夢中になっているのは、村上家に伝わる村上水軍の埋蔵金探し。少々無茶をしても突き進む楓は、担任の宇治原(小泉孝太郎)に諭されながらも、仲間たちとの冒険を心から楽しんでいた。

村上海賊に伝わる伝説の横笛-
しかし同じ頃、島の大人たちの間では深刻な問題が持ち上がっていた。島民にとって生命線であった島と本土を結ぶフェリーが、老朽化を機に路線廃止されるというのだ。フェリーがなくなれば、島での生活ができなくなるかもしれない―。
島の暮らしと島の人々が大好きな楓は、なんとかしたいと考え始める。
「村上水軍の財宝を見つければ、フェリーを直せるかもしれない」。

そして迎えた12歳の誕生日、楓は蔵の奥から古びた一本の笛を発見する。その笛は、武吉が息子の12歳の船出に与えた「初陣の笛」。そしてその笛には、村上水軍の埋蔵金を示す手がかりが隠されていた。
その頃、フェリーを巡って言い争う大人たちの議論は、暗礁に乗り上げていた。楓は、不安な気持ちを学と冬樹にぶつけ、喧嘩してしまう。

肩を落とす楓に、祖母・絹子(中村玉緒)の声と、遠い遠い先祖である武吉の声が重なる。
「迷わず、進め―」
その言葉に後押しされ、楓は財宝を見つけることを固く心に決める。

いざ、宝探しへ。激しい潮流が楓を襲う!
読み解いた地図によると、村上水軍の財宝が眠る島へは、瀬戸内海の激しい潮流を越えて行かなければならない。楓は、水軍レースのエースである愛子(葵わかな)に教わり、学、冬樹とともに船の操縦を猛特訓する。
そしていよいよ決行の日。楓、学、愛子、冬樹は、力を合わせて舟を漕ぎ出す。しかし行く手を阻むのは、激しい潮流だけではなかった。宝を狙う島の不良たち、ご先祖さまが仕掛けた巧妙な仕掛けの数々が、楓たちを次々に襲う。楓たちは無事、財宝を見つけることをできるのか?そして島の危機を救うことはできるのか―?
大切なものを守るために突き進む。時を超えて蘇る歴史アドベンチャーが、今、出陣する!
http://setokai.heisei.pro