不在

エレニの帰郷の不在のレビュー・感想・評価

エレニの帰郷(2008年製作の映画)
4.0
人は常に還る場所を探し求めている。
そして死だけがその答えなのかもしれない。
永遠なる死、死なる永遠こそが我々の還るべき場所なのだろうか。
かつて詩人は、永遠と一日に違いはないと詠った。
詩によって人はいつでも好きな時間に戻り、逢いたい人に逢うことができる。
ならば死は永遠ではなく、また永遠は死ではない。

アレハンドロ・ホドロフスキーは自身の作品の中で、過去を振り返ることを風が通り過ぎると表現している。
その風だけが、人の過去に積もった埃を払ってくれる。
ホドロフスキーやアンゲロプロスといった詩人たちは、詩を一陣の風と見做しているのだ。
詩を詠み続ける限り、風が止むことはない。
過去が完全に消え失せることもなく、故に人が死ぬこともなくなる。
永遠なのは死ではなく、生なのだ。
不在

不在