荊冠

ロボットカーニバルの荊冠のレビュー・感想・評価

ロボットカーニバル(1987年製作の映画)
4.5
OPとEDの内容はつながっていて、やはり監督が大友のせいか下手すると一番出来がいい。
OP、砂漠の村にやって来た巨大な機械に搭載されたロボットのカーニバル一行は、華麗なファンファーレを奏でながら村を徹底破壊していく。ロボットの陽気さと容赦ない爆撃殺戮のギャップがむちゃくちゃイイ。そして現れるタイトルに何だコレはOPだったのかとズッコケる笑
EDでは、OPの無差別殺戮ロボットが、大昔(産業革命頃のヨーロッパらしい描写がされている)に娯楽のために作られ、大衆に喜ばれていたものだったことが分かる。
しかし今は誰に制御されることも修復されることもなく暴走しつづけ、EDではついに砂漠の途中で力尽き崩壊する。
人の意思によって作られた意思なき機械の絶命の様子に一抹の切なさを覚えるが、その後砂に埋もれた機械の一部を持ち帰った砂漠の民が爆発という憂き目に遭っており、最後までシュールでシニカルなエンタメだった。

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『フランケンの歯車』(台詞ナシ)
自作の巨大ロボットを目覚めさせようと奮闘する博士の話。ロボットが目覚める時の演出が圧巻、台詞がないのにここまで魅せるかという。意図的でないとはいえ自分の愛児に殺される展開好き。

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『DEPRIVE』(台詞ナシ)
少女がヒソカみたいな男に攫われるも、少女が大切にしていたロボットが助けに来て、実はその中身はイケメンでしたという。
良くも悪くもザ・80年代という仕上がりだが、DIDポジションの美少女、大した理由もないけど美少女を攫う悪役(何故こういう悪役って必ずといっていいほど不敵な笑みを浮かべているんだろうか)、少女を救う肉体派ヒーローというテンプレなキャラと展開がむしろ懐かしいという意味で楽しかった。
80年代アニメの戦闘シーンで絶対かかるあのシンセっぽいBGMも何気にイイ。
ロボットが実はイケメンでしたという展開が後半の『STARLIGHT ANGEL』と同じなんだが、好意的に見ればこちらは「自分を救ってくれたロボットがかっこいいヒーローに見える」という表現だと取れなくもない。

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『プレゼンス』(台詞アリ)
キャリアウーマンの妻に求める女性像を見出せなかった男性がひそかに理想の少女ロボットを作るも、恋愛というプログラムした覚えのない感情に目覚める少女に恐怖を覚え破壊してしまう。その後年少女の幻を見続けていた老いた男性は、ついに少女と共に天に召される。
台詞が陳腐で、「数年後……」みたいな切り替わりが2回もあるので、脚本をもう少し練ればより感慨深い作品になった気もしなくもないが、やりたいことは分かる。

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『STARLIGHT ANGEL』(台詞ナシ)
女友達と遊園地に遊びに来ていた少女が、友達のボーイフレンドが自分にも愛をささやいていた二股男だったことを知り涙にくれるも、落としたペンダントを拾ってくれた遊園地のロボットがイケメンで次のボーイフレンドになりました、という話。
ロボットの中身がイケメンだったという展開は『DEPRIVE』と同じで、ロボットよりそんな人間の男がイイのか……ロボットでもイイじゃん……むしろこんなオムニバス作品だからこそロボットと人間の恋愛をあえて描こうとは考えなかったのか……と一瞬思ったが、
ロボットの頭が転げ落ちるシーンなど、首元があえて映らないように描かれてるので、もしかしたら「ロボットの着ぐるみを着ていた男性スタッフだった」という意味のオチだったのかも。
BGMがFFのクリスタルのテーマに聞こえる。

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『CLOUD』(台詞ナシ)
ストーリーではなくアニメの表現を見る作品って感じ。
つまらなかったけどひたすらにアニメーターって本当に絵がうまいなと思っていた。

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『明治からくり文明奇譚〜紅毛人襲来之巻〜』(台詞アリ)
エヴァじゃなくてオネアミスの頃の、あの鼻が丸くて顎がしっかりある感じの貞本キャラデザだ~と思っていたら、オネアミスと本作が同じ1987年発表だったことに気が付いた。
熱血主人公、ヒロイン、マジメ眼鏡、力持ち、ぼんやり、みたいなキャラぞろえが古いアニメのテンプレって感じがして良い。
金属のロボットではなく木造のからくりを描いたり、それに対してアメリカ人のロボットは煉瓦造りだったりと設定は面白いが、戦闘が始まってからの後半の展開がちょっとグダったかなって感じ。
ヒロインにセクハラ(本作はさりげなく肩を抱こうとしただけなのでセクハラってほどでもないけど)して怒られてチャンチャンって感じのエンドも、陳腐なのが一周回って懐かしくてイイな~。

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『ニワトリ男と赤い首』(台詞ナシ)
一晩の百”機”夜行とそれに遭遇してしまった酔っ払いの逃走劇。
冒頭のシーンの人物描写がスゴイんだがこれはロトスコープで描いたのか?
どんどん混迷を極めていくロボットたちの一夜限りのお祭り騒ぎの作画がすごい。最後は実はロボットたちは工事現場の機械だったというオチ?
OPとEDを除けばコレが一番好き。
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