mimitakoyaki

ほとりの朔子のmimitakoyakiのレビュー・感想・評価

ほとりの朔子(2013年製作の映画)
4.5
この映画はこんな話です!とはっきりとした答えのある映画ではなく、見終わった後に言葉にならないものがじんわりとほとりの波紋のように心にそっと触れて染み込んでくる、そんな感じがしました。

自分が空っぽだったと気づき、これからの自分も見えず、どこに居場所があるのかもわからない、何者でもない、そんな寄る辺ない曖昧とした不安定さや、何かはっきりとしたものを見つけられない自分へのなんとなくの焦りが、朔子とタカシから繊細に伝わってきます。

何処か遠くに行きたい、遠くに行けば居場所を見つけられるんじゃないか、でも、それはすぐそばにもあるのかも…
そんな曖昧な問いと曖昧な自分、大人でも少女でもない朔子がほとりに立ち、川面や広い海に小さな波紋が揺れながら広がっていく。それは大人に向かって踏み出していく朔子を思わせました。

田舎で過ごす夏休みって、森や畑や川辺のにおいや音までもがずっと愛おしく心の奥に残るけど、田舎から戻ったら夏休みも終わってしまう現実が待っていて、特別の寂しさをいつも感じたものです。
そんなノスタルジーに駆られるような短い夏の、その時にしかない美しさや危うさを大切に切り取ったようであり、透明で、それでいてハッとするような鮮やかさを瑞々しく描いていました。

何と言っても二階堂ふみの魅力。
モラトリアムな朔子を体現していました。
赤いドレスや水着姿がほんとに眩しかったです。
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