ぴんゆか

アデル、ブルーは熱い色のぴんゆかのレビュー・感想・評価

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
3.0
やっと見た。
覚悟してたけど想像以上に長くて途中でまだ?という気持ちにならなかったといえば嘘になる。

同性愛であるということをゴールにせず、
あくまで普遍的な恋愛模様として描かれているのが公開時の高評価につながったと思う。
主人公が全然イケてなくて常に眠そうな目、出っ歯、半開きの口なのも至極普遍。

題材の”ブルー”には本当に良くできていると何度も感心させられた。
まず、これまでの一般的な恋愛を想起させる”赤"と相反する"ブルー"であること。

燃えるような感情をも表しうる赤ではなく、"hot”とも表現しないが、"最上の暖かさ"の色としたこと。

そして主人公の目に映る数々のシーンがブルーであること。

- 最初にキスする女の子のネイル、指輪
- 友達に誘われてついてきたゲイバーのネオン
- レズバーにいる時の服
- 授業中の教室の色
- ベッドの色
- エマと別れた後仕事で訪れる海(水着は赤)
- 最後に呼び出したレストランでエマが消えていく部屋の色
etc…

正直そこまでしなくてもわかる!と思うくらいに至る所が青青青なのだが、
アデルの目に映る魅力的なもの、世界、憧れ、自信を駆り立たせるサインのオマージュが”ブルー”として表されているのであり、もしかしたら実際には全ては青でなかったかもしれないとも思った。

特にエマと別れた後訪れた海で自信を包む世界がほぼ真っ青であるのに、自身の水着が赤なのは吹っ切れようと迷う気持ち、憧れにはなりきれないという気持ち、色々と考察のしようがありそうで興味深かった。

エマがパーティーで他の女の人と隣り合わせで親密そうに談話するシーン、
アデルの不安な気持ちがスクリーンに映る映画に表され、踊る肩越しに遠くの相手を気にする様子などがシンクロしていたのが美しく、感傷的だった。

仕事も好きだが、エマと一緒にいることが自分の最高の幸せであるアデル、
自分の目標達成に奔走し、それが人として1番の幸せであると思う故に自分軸で生きていないように思えるアデルを重く思うエマ。
思えばエマはこの時からもしかしたら"移り気"になっていたのかもしれないし、
何もかもが正反対の二人は最初からベクトルが違ったとも言える。
違いゆえにお互いを意識し、魅力的だと感じることはあっても、
それは短期的な炎であり、持続しないということも十分にあり得てしまう。

現在の肉体関係に満足しているかと聞かれたエマが濁し、答えたがらないのは無論アデルと比較してしまうと現在が物足りないからだといえる。
しかしながらエマはもう当時の彼女ではなく、肉体関係や刺激に強く結ばれた関係ではなく、それらを必要としないでも強く結ばれていられる関係を欲するように精神的に成長した。
一方のアデルは前者であること、そこに完全に到達することが憧れになれること、エマの隣にい続けられることだと思っていた。
これこそがアデルが完全なブルーになり、エマが対照の”レッド"となっていったラストに繋がる。
(最後の展示会では殊更声高に昔の、そして新しいエマの色についてなどがインタビューされていた)

ちなみに、他の方が書かれているように"欲"の描写に力を入れるあまり、
食事のシーンは大変見苦しい映りで、人によっては不快感しか残らないかもしれない。
ただそれを差し置いても個人的には一見の価値ありだと思う。
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