Lana

アデル、ブルーは熱い色のLanaのネタバレレビュー・内容・結末

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

雑記。後に追記。
日曜の夜なのに、夜更かししてしまった…


映画の撮り方、俳優への扱い方が物議を醸すところも否定できないが、とにかくこの監督は、演出は、すごい。とても文学的、芸術的だ。とにかく、この映画は、すごい。

*私にしては珍しく、脚本の好き嫌いは置いておく。(後味のいい話では決してない、ストーリーはあまり好きではない)


●表現について
画面の作り上げ方が本当に巧みだなと思う。キス越しの西日。バーでゆらりと現れる青い髪。キスしてきた女友達に「そんなつもりじゃなかった」と言われた後の、廊下を早足で歩いていく長回しのシーン。

・ところで、デモやゲイバーの場面で青が多用されていたのは、そのあとのエマの青い髪に繋げるためではなかったか。そのあとも青ばかり用いられている気がする。バーや、アデルの着ていたワンピース。それでも終盤では、アデルが次に踏み出していく暗示なのか、真っ赤に爪を塗っているところが映し出される。

エマが初めて登場する横断歩道の場面でも、路上ミュージシャンの音楽が突然かかって、「何か起こるぞ」という期待感の演出が素晴らしかった。
→終わり方が秀逸。(元)映画俳優の彼がアデルを追いかけつつ、逆方向に行ってしまうところで同じ音楽がかかっている。彼は、アデルの運命の人ではなかったのだな、と、自然と思わせるような演出。計算され尽くしているはずなのに、あまりにも自然で恐ろしすぎる。

さらに遡って言えば、作品冒頭(=観客がいちばん注意を払って観る場面)で「ひとめぼれ」という要素を出してきたのも流石だと思った。

・作品全体を通して「言葉」が少ない。たらたらとセリフで状況説明をしたりしない。人物のつくりだす、間と、表情と、夢と、色彩、画面で魅せる。巧みである。

・学問的エッセンス/スパイスについても、まさしく巧みである。文学・哲学・美術を映画にmixさせて練り上げた作品。物語に奥行きを加えている。だが一方でインテリ臭の強い嫌味な感じも出つつある(エマが言っていたように。もしかしたら作品自体がそれを狙っているのかもしれないけれど)。というか、こんなふうに語る私こそいちばん嫌味ったらしいよなあ笑


・気になったのだが、(特にアデルの)睡眠/食事場面をクローズアップしたカットが多い気がする。わざわざ寝顔だけのカットとか入れてくるし。((食事の仕方がすこし汚いのが気になる…のは置いといて、)) なぜだろう、人間の三大欲求として、睡眠と食事と、それから、「性」を強調したいのだろうか。


●アデルについて。
役者がすごい。ぽかんとした、ぼんやりとした顔つきがデフォルト。黙って無表情でいると、つまらなさそう。笑顔は貼りつけたよう。広い二重幅はどこか眠たそう。そしてボサボサの髪。
しかし、デモに参加したり、煽る同級生に殴りかかったりして、この子は胸に何か煮えたぎるものを秘めていることが伺える。マグマのような熱情。先生になりたい、という会話を通じても、先生になるまでのステップのイメージや、安定思考をしっかりと持っているあたり、大人のそれである。
冷たい印象の彼女だが、あまりにも自然な号泣シーンで心を持っていかれた。女友達にふられるシーンで、涙が頬を伝うタイミングが完璧すぎてぞくぞくした。

とにかく「リアル」な彼女、
役者万歳。素晴らしすぎる。
ここまで自然な女の子になるなんて。

余談だが、アデルはキス魔だよね。うちに秘めたる熱情ゆえか。フランスのティーンエイジャーたちは、こんなに簡単に体の関係に流れていくのかな。個人的にはなんか、嫌。

最後まで見ました。。。アデル最低です。。。浮気したほうが100%悪いです。寂しいならエマにそのことを話すべきだし、エマが応じてくれないなら別れてから次に行けよ。こんなにアデルがバカなヤリマン女とは思わなかった。がっかり。…と言いつつ、死ぬほど後悔していることは痛いほどに伝わってきた。何をしていても涙が止まらない演技がうますぎる。悲しすぎてそうなってしまう状況、めちゃめちゃわかる。1回大切なものを失わないとわからないような、股の緩い女だったんだな。人間誰しも過ちはある。それを許すか、許さないか。エマは彼女を許したようだが、もう相手がいたということなんだね。

●エマについて。
にやりとわらったときの、意地悪い少年のような、しかしやはり爽やかな笑顔がたまらなく魅力的。白い肌。どこか眩しそうな眼差し。どうしようもなく、隠しようもなく、私の好きなレアセドゥ。

それにしてもエマ、どうして浮気した元カノに会うわけ…私だったら絶対に許さないけど…「私をバカにして!」という言葉、真理だと思う。相手のことをバカにして「気づかないだろ」と見下しているから、浮気はするし、平然と嘘をつくんだろう。「わざとじゃないの」「なんとなくの成り行きで」。聞けば聞くほど火に油を注ぐような、目も当てられない言い訳ばかり。あぁ、私の怒りが高まるばかり。…そろそろつらつらと怒るのやめます。


●性と恋愛、同性愛とレズビアン、について。
ここまで長回しで、激しいセックスシーンがあると思わなかった。「レズビアンのセックスはこんなものです」と、「あんたらストレートがやってるものとさして違いはないでしょう、ほら、よく見て」と言われたように感じた。
⚠️他の方のレビューを見て気づいた。このシーンはいわく付きだそう。さすがに、こんなによく出来たシーンなら、俳優にものすごい負担がかかっただろう。それを感じさせないほどの完成度に仕上げてきた、この映画作品が怖い。完成度が、高ければ高いほど…。

法律や行政の世界では、手続が違法なら、導き出した結論も全て違法という考えがあるわけで。それと同じで、どんなに「作品をこうしたい」という思いがあったって、選んではいけない手段がある。監督は致命的である。こんなに素晴らしい作品が、俳優に配慮されて作られていなかったことは、致命的。

私は今、作品自体の点数は下げないけれど、監督の横暴を勘案すれば、この作品に点数はつかないだろうと思う。

https://www.elle.com/jp/culture/celebgossip/a39958794/lea-seydoux-intimacy-coordinator-not-helped-220511/
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