さわら

アデル、ブルーは熱い色のさわらのレビュー・感想・評価

アデル、ブルーは熱い色(2013年製作の映画)
4.5
例えるなら湖底に隠れた水源、179分という時間をかけ、ゆっくり鑑賞者に豊かな感動をもたらす。決して大きく心を揺さぶられるわけではないのだけど、小さな感動の積み重ねが胸に満たされる傑作である。
同性愛やら過激な性描写ばかりが目立つが、それより僕はアデルの生き方にすごく感動してしまった。愛に生きるアデルが、愛に傷つき傷つけながらも自分を見失わず生きる姿が堪らない。身を切るような深い悲しみに見舞われても、アデルは教師という役割を全うする。特に子供たちが帰った教室で、涙を流すシーンにアデルに強く心が締め付けられた。歓び悲しみに問わず、人生は続く。まさしく愛を切り離すことのできない、人間の普遍的な生きることへの賛歌である。スピルバーグ評の「偉大な愛の映画」というのは言い得て妙。
今作のどの場面を切り取っても絵画のように美しい。映画館というより、美術館の特別展と幻覚を起こしてしまうというのは過言ではない気がする。そして青色がやたらと目につく。ブルージーンズ、発煙筒、ドレス、ベッドシーツなど。ここまで徹底する監督の性癖を疑う(ほめ言葉)。
共に笑い、共に誓い、共に泣き、共に背負い、共に抱き、共に迷い、共に願う(コブクロを彷彿)。いやー愛って本当にいいもんですね(水野晴郎を彷彿)。なんてくだらないことを思いつつ、土曜の夜に1人この映画を観ましたとさ(妙に切ない)。