来夢

わたしの名前は...の来夢のレビュー・感想・評価

わたしの名前は...(2013年製作の映画)
4.5
数多くのヒット映画の衣装デザインを手がけてきた、あの世界的ファッションデザイナーのアニエス・ベーが初監督。一流ファッションデザイナーは映画のセンスも一流だった。
なんとも痛々しく許し難い、親による子供に対する性的虐待を扱っていながら、それを短絡的な勧善懲悪として終わらせず、それぞれの抱えるシンプルかつ複雑な難しい感情を、様々な映像や音像を用いて芸術的に表現している。家族を亡くした一人のドライバーとの出会いがもたらすものは、決してすべての解決とはならないが、被害者の苦悩と加害者の葛藤の先にある、ほんの僅かにしか残されていない幸福な未来への道しるべとして、強い輝きを見せる。
かなり重たく難しいテーマを扱っているけれど、その重さを削ることなく伝え、それでいて優しさをもって自然と身体に入ってくるメッセージの受け渡し方は、映画初監督とは思えない。これぞアートの正しい使い方ではないかなと思えるね。
今のところ、サブスクでもTSUTAYAでも見当たらないし、wikiページもない作品なので、渋谷アップリンク通っていた人かアニエスベーファンかソニックユースファンくらいにしか知られていないマイナー作かもしれないけれど、DVD出てるのでもし見かけたら是非観て欲しい1本です。結構辛い映画ですが。
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