マチュー・アマルリックがエロい大学教授を演じる本作。彼の本領が発揮されている。
大人の魅力を振りまいて文学部の女子からモテモテな彼は、どこか余裕のある態度で女の子を取っ替え引っ替えしている。煙草をふかしながらあの大きな目で見つめられるとそりゃ恋に落ちてしまう(確信)。時々子供っぽい面や、ロマンチストな文句を垂れ流すのもまた言いようもない彼の魅力だが、私の一番のオススメは彼のイジられた姿である。普段落ち着いているのに、焦らせたら急に小物感が滲むあの表情がたまらない。特に股間を不意に触られた時の反応など…
物語の初めの方で、一夜を共にした女学生がベッドの上で死んでしまう。アマルリックはそれを隠し、何事もないように装うが、そのことが頭から離れないといった様子だ。そのため、全体の雰囲気としてはどこか陰鬱としている。彼のサソリ座という設定どおりな雰囲気の映画であった(10月25日生まれのアマルリックは実際もサソリ座である。納得)。
そんな悲劇があっても、彼は人を愛することをやめない。女学生に飽き足らず、女学生の母親や自分の妹までその対象に含めるのはさすがにどうかと思うが、アマルリックならまぁいいかという気になる。これに不快感を抱きそうなら観ないほうがいい。ただ、それでも彼は魅力的だ。
物語的には「へぇそんなこともあったんだね…」くらいの内容で、雪降るヨーロッパの雰囲気と危うい情事を楽しむ映画である。私はその雰囲気を存分に楽しむことができたので、かなり満足度が高かった。ちなみに斯く言う私もサソリ座だ。