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愛の犯罪者/ラヴ・イズ・パーフェクト・クライムのemilyのレビュー・感想・評価

3.3
山荘で妹マリアンヌと二人暮らしをしている大学教授マルク。女好きの彼は生徒を家に連れ込み情事を重ねていた。ある日彼と一夜を共にした女生徒バルバラが行方不明になり。

冒頭から暗い夜の道、何か起こりそうな雪景色、スイスの雪山を昼間と夜の側面で美しく描写し、雪の白が、大学の殺伐とした雰囲気と、規則正しく並べられた椅子の白が作品全体を怪しげな美しさで包み込んでいる。

妹との微妙な距離感、何もないようで何かあるような意味深な目線と言葉で行間を埋め、たゆたうタバコの煙が全てをぼかしていく。

現実と幻想、文学の授業、するりと入ってくる刑事と、白にきらびやかに浮かび上がるバルバラの義母。コントロールできない感情の揺れが夢遊病と交差し、後半はサスペンスフルな展開で一気に物語が展開していく。気持ちと体の裏腹を新しい女の子で刺激し、揺るがない気持ちは行動へつながっていく。

終盤に明かされる真実が白を真っ黒に染めていき、善が悪に染まるようにドロドロと純粋な物が崩れ去っていく。愛にまどわされ、愛に飲み込まれ、真実を見失い男は哀れにこころを裸にされる。失い見えた超えられない愛の呪縛が、今度は自分自身へ向けられるのだ。完全犯罪という形を持って遂げられるラストは爽快さえ感じさせる。
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