まこぞう

ウィ・アー・ザ・ベスト!のまこぞうのレビュー・感想・評価

ウィ・アー・ザ・ベスト!(2013年製作の映画)
4.2
数少ない苦手ジャンルである最近の音楽映画にもこんなに素晴らしい作品があるのかと驚きました。こんな映画ばかり製作されて、『はじまりのうた』や『セッション』みたいな映画がこの世からなくなりますように。

クラーラ、ボボ(OTOGIBANASHIのBIMにそっくり)、ヘドウィグの中学生3人娘による単純なパンクバンドやろうぜ!物語なのに、どうしてこんなに面白いのか。

クラーラとボボが、いつもカフェテリアで独りのヘドウィグをメンバーに誘う時に「私たちのモットーは寂しい人と仲良くなるってこと!」と叫ぶところでは、彼女達らしいパンク観が一言で伝わってグッときた(正直言えば、原語は分からないけどもっと良い訳があるのではとは思いましたが)。

脱線しない程度というか気づかないくらい自然に原発問題や宗教、ジェンダー問題などを盛り込んでいるのも凄い。1982年当時、パンクはかなり共産主義的なものだったことも伝わる。今は右翼的なパンクもいるけど、あれは何なんだ? 単にバカがパンクを履き違えているだけと思いたい。

役者も3人娘は言うまでもなく、ちょこっとしか出て来ないクラーラのひょうきんなお父さんまでが最高。クラリネットでバンドに入れてくれと言い出したり、ヘドウィグの母親がクラーラ達を警察に突き出そうとしている話を半笑いでするところなど、ウザくなりそでならないコメディ演技でお見事。

カフェテリアでヘドウィグが自分の母親の行動を恥じたことを告白するシーンには泣きそうになった。

おっさんが観ても最高だと思える作品だったから、女性が観たら感動で椅子から立てないのじゃないかしらん。

この映画を観てバンドを始めましたという女の子たちがいたら、どんなに素敵なことでしょう。絶対いるとは思うけど。

ただ一つ、残念だったのが字幕。
1982年の話なのに「〜がウザい」や「演奏は上手いけど曲が残念」など今現在風な言い回しが何度も出てきたこと。今観る分には気にならないかもだけど、20年、30年後に観たら変な感じになるのでは。配給会社さんは素晴らしい作品なので後々のことも考えて字幕を付けてもらいたい。って、何だか偉そうなクレーマーみたいで書いてて気持ち悪い…ごめんなさい。

#ノーザンライツ
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