春とヒコーキ土岡哲朗

インセプションの春とヒコーキ土岡哲朗のレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
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緊迫したシーンの途中で、面白さにニヤけた。そして鳥肌が立った。

心技体が揃っている。
心=奥さん関係の心理描写(死因、虚無の世界)。
技=人の夢に入り込む設定を細かく詰めている部分や、「サイトーが落ちてくる時間だ」みたいなかっこいいセリフ。
体=アクションやヴィジュアルの面白いシーン。回転するホテルの中でジョゼフ=ゴドン・レヴィット演じるアーサーが孤軍奮闘するシーンが面白すぎて鳥肌が立った。

この映画は善悪をはっきりさせていない。主人公のコブは誰かのためではなく自分のために犯罪を犯していて、そういう意味では悪人。劇中でも、そろそろ犯罪から足を洗い、子供の下に帰りたいという自己利益で動く。渡辺謙演じるサイトーとの関係も、利益をエサに困難な仕事を押し付けられるという不健全な関係。任務中には協力して進む仲間として絆も生まれているが、もろもろ解決して飛行機で目を覚ましたシーンでは、感動を分かち合ったりせず、報酬を用意するように電話を催促している。でも、任務中は確かに絆も生まれていた。そのように、描いていることが道徳的かどうかハッキリしないところに、この映画の持つ人格が人間的でリアルだなと感じた。