ATフィールドの概念を元に映画1本作ってみてとノーランに依頼したら、後頭部から「作ったよー」と豪速球で投げつけて来た。第一印象はそんなかんじでした…（震）
長く語りたくなるし自己満レビュー上等なので書いてく。完全に個人の解釈とネタバレ。
まず作中における夢の概念への理解。
次に他人と自分、二者間の夢の境界への理解。そして覚醒、夢から醒めて現実に戻る手段への理解。
三段構えで夢の意義を唱えられ、ノーラン初心者にはお腹いっぱい過ぎて胃もたれ必須なのを俳優勢が綺麗に胃洗浄してくれるのでご安心ください。シャッターアイランドみたいなディカプリオがお好きな方にオススメ！
相も変わらずシンプルなテーマを難しく描いてらっしゃる。まだインターステラーしかノーラン作品視聴してないが癖がつよつよ。彼には重力に強いこだわりを感じるが、重力に恨みでもあるのだろうか…
今回は夢が及ぼす影響がテーマだったのだとは思う。理性と感情の相反する視点からノーランの夢への解釈をアウトプットした作品かと。システムなどを解説してたり計画の箇所が理性面、仲間にひた隠した潜在意識の違和感の正体が感情面かと。
エヴァンゲリオン世代の私にはATフィールド（他人との境界みたいなもん）により夢と現実が明確にされていて、作中でのATフィールドはトーテム（コマやチェス）だな感。
夢は潜在意識に制限が掛からずそれが常にオープンな状態なら、無秩序な状態なはず。選択結果、むしろ選択出来る時点で秩序が存在してしまっている。
ただ潜在意識を夢の造り手の意識の反映とするなら、少なからず知りえない無秩序（知識や情報）は反映出来ない。
なので傍から見たら無秩序な夢世界でも、秩序と言う限界が設けられてしまうのではないか？と仮説。
モイが存在する他者から見たら無秩序な状況が、コブには秩序だった。モイが現れる=潜在意識（秩序ある世界）。
コブが説明した内容に嘘があるなら「誰かの夢に入ったら造り手以外は潜在意識により排除される」の所だと思う。それには他者と認識する秩序（制限）が必要で、潜在意識においても自分以外は敵としないと成り立たない。
意識した存在（自覚状態）を潜在意識に戻すことは無理ゲーが過ぎる。モブ達の視線は単純に夢の造り手の敵意みたいなものかと。
夢の層は知識/思考の層だとおもわれるので訓練が出来てしまう。だから初心者のアリアドネは勘は良いがまだ経験が足りない。初めて共有した時、未来予想が出来ずにモイに刺された。
敵意=視線と結んだのは、刺される前にコブはアリアドネを脅威に感じた直後、アリアドネは刺され現実に戻された。
作り替えすぎがダメなのは思考の数が増え脳への負荷がかかりすぎる為。疲れやすくなるって話なだけかと。人は1日9000回選択してるらしいので、そりゃ脳負荷がヤバいだろ。
ただ思考が深過ぎてしまいモイは夢と現実の境が混濁し精神崩壊した。この部分はとてもリアルで現実味のある作品だと思う。心を精神として良いかは別として。
深い層での死は虚無ではなく、正確に表すなら精神崩壊だと思われ。元の自分に戻れなくなる。虚無が何も感じない状態なら、サイトーは老いた自覚も持てないから。なので精神崩壊の方。
他人の手に掛かり覚醒（目覚める）ではなく、自分で自分を手に掛ける選択自体が精神崩壊と呼べる行為とされているので。
夢でそれをした結果、現実でも精神崩壊/虚無が続くのはそのせいかと今の所は解釈してる。
作中でモイは3層目に留まっていたが、ラストはコブが4層目（自宅）に行き、最終5層目（空港→自宅）でエンドだと思う。夢から覚醒できずか、現実で虚無化の状態か決定づける材料が足りない。
自ら死を選ばなかったのでトーテムは回り続けてしまった。モイのコマと描きながらもコマを回転させるのはいつもコブなので今はコブのトーテム。
となると多分モイはホテルから飛び降りたのはガチ。スウィートルームが荒れてたのは喧嘩していたのかと。飛び降りか、コブがマジで突き落としたか。
コブもモイ程じゃないけど虚無化はしていたから、モイが「向かいの窓から飛び降りた」と認識している。
流石に警察も国際指名手配するにはそれなりの事情を提示するし。
ってここまで打ち込み力尽きた。
いやはや奥深い作品。作り方がノーラン作風なだけに非常に哲学的だが、根本は夢と現実/まともとは何かって事だと解釈した。
子供たちの顔が見れなかったのは、母（モイ）を追い込んだ罪悪感と言うそれこそ潜在意識からだと思う。ラストに見れたのは、自分も精神崩壊を起こし現実で生きていけない事を選んだから。モイと同じになったから、罪悪感が消えたんだと思いました。
難しいし疲れるが、ノーラン作品からしか得られない脳が痺れる感覚、きらいじゃない。だがインターステラーの方が好きや！
