エソラゴト

インセプションのエソラゴトのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
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前半部分はこの作品に於けるルール説明に時間を丸々費やしている為、中盤から後半にかけてのスリリングなミッション遂行シーケンスは視覚的には割とスンナリ入り込む事が出来た。

とはいえ、多重階層からなる夢世界のルールや時間軸の設定は複雑で難易度が高く一度では飲み込みきれない為、最初の鑑賞後にはパンフやネットでの詳しい解説の補完が必須となる。そしてその後もう何回か観返すと面白さがその都度倍増するというまさしく噛めば噛むほど…なスルメ作品なのは間違いない。

各々が特技を持つプロ犯罪者集団が緻密な計画のもと、難攻不落の大きな獲物を狙うという所謂ケイパームービーなのだが、彼等の目的が奪ったり盗んだりするのではなく記憶を植え付ける・情報を刷り込むという真逆の発想の転換が今作の面白さの白眉となっている。

また他人の記憶領域に忍び込むことにより、自分自身の過去のトラウマに向き合うことを余儀なくされ、それを克服していくというヒューマンドラマにもなっているのが今作の魅力の一つでもある。

その魅力を存分に引き出しているのは主演のレオナルド・ディカプリオの存在感。『タイタニック』以降はそれ以前の作品で付いたアイドル的なイメージを払拭する為なのか割と硬派な作品に出演する事が多くなり、こういった心の葛藤や苦悩を表現する繊細な演技力が豊かになっていた彼にはうってつけの配役。

また音楽を手掛けているハンス・ジマーのたっての希望によりロックギタリストのジョニー・マー(ex.ザ・スミス)がゲスト参加しているのもファンとしては嬉しい限り。一聴して分かる彼独特のギタープレイを劇場の大音響で聴く事が出来て大変満足。


ディカプリオを主演に起用したハリウッドでも屈指の超個性派監督2人、クリストファー・ノーランとクエンティン・タランティーノ。作風や作家性はまるで違うが、フィルム撮影への強い拘り、自ら執筆したオリジナル脚本重視、尺の長さを感じさせない引き込ませるストーリーテリング、CG嫌いのアナログ主義、マイペースな製作間隔等々共通点の多さもさることながら、何よりも映画に注がれる情熱と愛情の深さが自分には毎回公開初日に劇場までわざわざ足を運んでまで鑑賞したくなる最大の要因となっている。


そして今作『インセプション』から10年、『メメント』からは20年、10年間隔で"時間"に纏わる作品を世に送り出しているノーラン監督が今年2020年に満を持して放つ最新作『テネット』。昨年の『スターウォーズ』公開時のフルIMAX予告編を観てから期待値上がりまくりなのは当然なのだが、日本上映が本国アメリカより2ヶ月も先なのは全くもって腑に落ちない(怒)