おいなり

インセプションのおいなりのレビュー・感想・評価

インセプション(2010年製作の映画)
3.7
TENET公開に向けて、クリストファー・ノーラン作品をいろいろと見返している。
とりわけこのインセプションは、よくできている反面、片手間に観ているとどんどん置いてけぼりにされてしまうので、ディカプリオがいまどこにいて何をしてるのか常に頭の中で考える必要があるので観ていて疲れた。
ノーラン作品は知的というほど難解ではないが、わりと観客を突き放した演出を取りがちなので、少なくとも僕の中ではけっこう評価がわかれる。が、本作の不思議な後味はわりと好きです。

本作のジャンルを一言で表すなら、小難しいミッション・インポッシブル。人の夢に入り込んで情報を奪う、そのために夢の中でさらに夢を見て、その夢の中の夢の中のまた夢の中で……と、世界観がどんどん入れ子状に増えていく、いわば世界観マトリョーシカ。しかもそれが次から次へと時間軸を前後しながら場面が移るので、無重力下でジョセフ・ゴードン=レヴィット(長い名前だ)が殴り合う有名なトレイラーに惹かれて、アクション映画を期待して観にきた観客は呆然だろうな、と下世話ながら思ってしまった。
設定上の複雑さに加えて、「産業スパイもの」でありつつ「ディカプリオのトラウマセラピー」という2つの主題を同時進行で解決しなきゃいけなくて、とにかく映画としてのカロリーが高い。主人公の抱えるトラウマ問題が、夢の中で嫁が作戦をめっちゃ邪魔してくる(場合によっては殺しに来る)という、直接的にもほどがある描写で表現されていて、めっちゃ面白かった。

「夢の中では時間の進みが遅くなり、夢の中の夢ではさらに遅い」
「トーテムというアイテムで今が夢か現実かを見極められる」
「夢の主が夢であることに気付くと世界が不安定になる」
などなど、映画を理解するためのゲームのルールブックが分厚く、序盤に洪水のようにバーっと説明される。この設定がかなり緻密にできていて、ストーリー上でも重要な意味を持つので、ポカーン状態だった初見よりある程度飲み込めた2周目以降の方がすんなり楽しめた。設定オタク的にはかなり刺さる部分なので、ドラマで何シーズンかに分けてもっといろんなパターンをじっくり描いてほしい。
ディカプリオ演じるコブさんは、スパイのわりには人情家な感じが前に出すぎてますが、夢とわかってても嫁を撃つのを躊躇って失敗したり、でもそういうとこがノーランのキャラらしい甘さで嫌いじゃないです。
トム・ハーディはいつみてもチャーミング。すき。

公開時期的にはダークナイトとライジングのちょうど間で、どれもほとんど出演者が一緒なので、同じ劇団の別の舞台を観に来たような感覚。渡辺謙も今回はいっぱい出てます。そういえば冒頭の「おい、怪しいやつがいるぞーっ!」って日本語は、ぜんぜん間違ってないんだけど、その間違ってなさが時代劇ぽくて面白かった。ヒース・レジャーももし生きてたら出演してたのかな。
おいなり

おいなり