ただのすず

祖谷物語 -おくのひと-のただのすずのレビュー・感想・評価

祖谷物語 -おくのひと-(2013年製作の映画)
4.1
祖谷、徳島県西部三好市に属する
四国山地中の隔絶地域。
平家落人伝説や祖霊信仰が伝わる地。

山奥にひっそりと暮らすお爺と春菜を中心に、
山に生きる人たちの物語。
天秤棒を担ぎバケツで毎日水を汲む、
ジャケットに描かれている姿が正にこの作品そのものだと思う。都会暮らしの私が、田舎って素晴らしいと感じていたものは所詮表面上のものだった、過酷。
環境について説教臭い作品ならやめようと思ったのだけど違った。どこで生きてもいいのだと思えた。
生まれ育った場所でも、流れ着いた場所でも。
自分が心から生きたいと思える場所で。
その為の道路、森林開発でもあるのだと感じた。

谷間の緑に囲まれた集落、山に積もる深雪、四季がありえないほど美しい。無声映画かと思うほど人が喋らないからそれを邪魔しない。かと思えば、田舎と都会をタイムスリップするような展開や人形が歩き出すファンタジックなシーンもあり、監督の色があって楽しい。
ひねれば水やお湯が無尽蔵にでる都会暮らしを描くからこそ、丁寧に掌で水をすくい使うラストのシーンが胸にくる。伝承なども散りばめられていたので、またじっくり観なおしたい。