ばーとん

祖谷物語 -おくのひと-のばーとんのレビュー・感想・評価

祖谷物語 -おくのひと-(2013年製作の映画)
4.3
田舎のありがちなスローライフを描いているようで実際には
あり得ないようなシチュエーションばかりが描かれる。
色々問題を抱えつつも村はそれなりにやっていけているんだが
トンネルが開通した途端に状況は一変する。
建設会社社長の息子が車で遁走、住み着いていた外国人たちもそれぞれに帰国、春菜の同級生の女の子も恋人と駆け落ち。
トンネルの向こう側の世界に吸い込まれるように村人が次々に消えていく。

爺さんが死ぬ日から物語は春菜の目線に切り替わりマジックリアリズム描写がラストまで延々と続くが、この辺りの技術も非常に高いので鼻につかない。東京での春菜は言葉をもたない。
祖谷で言葉を持たなかった爺さんが死んだ時点で話す理由を失ったんだろう。

ラストは考えうる限り最もベタでエモーショナルな展開になるが
ちゃんとカタルシスがあるし変に捻らずに正解だったと思う。
あのラストがなければ厳しい現実を突き付けるだけの救いのない映画になってしまう。

「魚服記」みたいな寓話色の強い作品でありながら
失われゆく日本の原風景をドキュメンタリー的に活写した立派な映画だ。
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