KojiYamanaka

アクト・オブ・キリングのKojiYamanakaのレビュー・感想・評価

アクト・オブ・キリング(2012年製作の映画)
4.0
【”演技”が人間を変えていく】
60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その加害者に、当時の殺害の様子を再現(アクト)させたドキュメンタリー。

ある種の社会実験的な設定が、登場人物を少しずつ変えていく。ラストは観るものにかなりの衝撃を与えます。

心理学の実験で、スタンフォード監獄実験というものあります。普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明した実験で、看守の役を与えられた被験者は、やがて囚人役に暴力的な行為にさえ及ぶようになったというもの。

その意味で、虐殺の加害者だった主人公が被害者を演じるうちに、やがて被害者の感情に波長が合っていくのは心理学的には必然だったともいえます。撮影側も、あんなラストになることは結構予測していたのかも。もちろん虐殺の加害者の暴力性には比べるべくもないものの、”演じさせる”ことの暴力性、つまり人を変えてしまう性質もあるなぁ、と思った作品でした。
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