「人を好きになる」にまつわる様々な男女の群像劇。登場人物たちの恋愛観は少しずつズレながらもそれらが交差していく様が面白い。
同じ部屋にいる男女が性的な雰囲気になることもなくテーブルを挟んでずっとお喋りしている構図が「街の上で」の原型になっていて、にんまりしながら鑑賞していたが、それは本質じゃなく、朝日が夕子との一晩の語らいの中で10年間思い続けたアイドルへの思いを断ち切るほどの「好き」という感情が芽生えたことが大事。何をもって人を「好き」になるのかということを考えてしまった。
秀逸だったのはラストシーン。全員集合した登場人物の中で柏木1人だけが車内で眠りこけている。車内で眠りこけた柏木の視界から登場人物が1人ずつフェードアウトしていき、残った柏木と棚子が会話を交わす。
「柏木さんは好きってどういうことかわかりますか?」
「えっ?」
「人のことちゃんと好きになったことありますか?」
「あるよ、そりゃ」
「私と一緒ですね」
この会話の後、棚子は柏木の視界からフェードアウトし、柏木1人が取り残される。
柏木からフェードアウトしていった登場人物たちは誰もが誰かのことを「ちゃんと好きになった」人たちと誰かのことを「ちゃんと好きになった」ことはないが、そちらに行こうとした棚子。もちろん恋愛観のズレはあるが、誰かのことをちゃんと好きなにった、あるいは好きになろうとした人たち。柏木だけが1人残されるラストカットがあまりにも鮮やかで、めちゃくちゃ好きだ。柏木と棚子のラストでの会話もめちゃくちゃ良い。会話の脈絡を読むと、お互い「人のことをちゃんと好きなった」ことがないというのが分かるのが良い。
唯一気になったのは柏木の寝癖みたいな変な髪型。なんであんな寝癖ヘアーにしたんだろう。違和感でしかなかった。
以下は個人的なメモ
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えっ結婚してんの???
辞表をラブレターみたいな封筒に入れるなよ笑
暴力を振るわれることによって自分のことが好きっていうのが確認できる。
あの一瞬で一目惚れ?笑
早いな笑
「俺は人の2倍思ってるよ。2人いるんだから」
別れてから「ああ、好きだったんだ」と気づく。
海で(欲に)溺れて死んだアイドル
テーブルを挟んでずっとお喋りしている構図。「街の上で」の原型かな?
どんだけ牛乳飲むねん笑
なんでスーツケース捨てたの?
同級生が消えた!!!笑
「やっぱダメだった」ちゃうねん!笑
別れろや、ていうか報告するってどういう状況?笑
「柏木さ、別れよっか」ってところで爆笑
この男、つける薬がないくらい鈍感というか無神経だな。
ラストで相互に関わりのある登場人物の全員集合。車内で寝ている柏木の目線のラストカット。「本気で人を好きになったことがない」柏木だけが車内で取り残される。
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