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ルートヴィヒのメルのレビュー・感想・評価

ルートヴィヒ(2012年製作の映画)
3.7
ノイシュヴァンシュタイン城の特集をTVで見てしまったので、そこで気になるルートヴィッヒ2世。

こちらはルキノ・ヴィスコンティのイタリア版よりずっと後のドイツ版。

美青年として歴史に残るルートヴィッヒ2世役はヴィスコンティの愛したヘルムート・バーガーには敵わないけど、こちらの役者は父、家臣、隣国との関係などに於いて悩める王を上手く演じている。

結果的には「狂王」として家臣に葬られる訳だけど、戦争で勝ち残っていくしかない時代に戦争を否定し芸術と音楽にしか興味を持てなかった王だったのだろうと思う。

「貴方の望む戦さのない平和な時代は今は無理です」と誰かに言われたように、時代が彼を許さなかった。

あのワーグナーにしてもルートヴィッヒ2世の援助なしには今の評価は無いし、近年世界中から人気を博しているバイロイト音楽祭の会場も当時は財政難を引き起こす原因として問題視された。

ルートヴィッヒ曰く「芸術に使う金は無くて武器を買う金はあるのか?」
戦争で人民が死ぬのを見るより芸術で国民を幸せにしたい...そんな夢見る王だった。

ひとつの歴史には幾つもの側面がある。
議会から嫌われて追放されてしまうほど夢の為にお金を使った王だけど、そのお陰で現代の私たちは中世の面影残るドイツロマンチック街道を旅してノイシュヴァンシュタイン城の中を見ることができる。

それはルートヴィッヒ2世が残してくれた夢のかけらなのかも知れない。

映画では後半役者が代わりただの太ったおじさんになります。
確かにルートヴィッヒ2世は晩年は太って別人のようになったのでそれも有りでしょうが、できるなら1人の役者で晩年も描いて欲しかった。
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