とうじ

バーフライのとうじのレビュー・感想・評価

バーフライ(1987年製作の映画)
4.5
ウェスアンダーソンが褒めてたので見た。
ブコウスキーの本は、「町で一番の美女」という短編集を高校生の時に読んで、とにかく衝撃を受けたのを覚えている。
人間は内臓とクソの皮袋であり、制度はまやかし、悪は善で善は悪、みたいな反骨的な世界観が延々と続くなか、よく読んでみると、でも彼は愛に関しては諦めきれなかったんだな、とわかる。そういう武骨さと繊細さが交わり、繊細だからこそあんな激しい物語を書くことができるのだなという印象を持っていた。
酒浸りのはずなのに、感覚がすごく鋭敏で、その点でバロウズのトロトロとした文体よりも全然好き(バロウズはヘロイン中毒でもあったので、比べるのは少しフェアじゃない気もする)。
特に短編集の表題作は、暴力と汚物に内包されたロマンチシズムが胸に迫る、本当に好きな作品で、カートコバーンが彼に影響を受けたのもすごく納得させられる。
でも、本当に嫌な気持ちにさせられる、ニルヴァーナで言う「ポリー」枠の小説も普通に結構書くので、ブコウスキーは油断できない。

で、この映画だが、ブコウスキー本人が脚本を描いているのもあり、とにかくセリフが面白い。
「75ドルくれたら、けつの穴が活火山みたいにブルブルするまでフェラしてあげる」っていうセリフは、映画史において娼婦が言うセリフの中で一位だと思う。
酒と娼婦と喧嘩と血と汚い老人で出来上がった惨憺たる(そして笑える)世界観の中、やっぱりその中心には、爽やかな、本当に小学生みたいな楽観性を含む愛の物語があるのだから、ブコウスキーは本当にぶれないなーと感心した。
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