リタ

ホドロフスキーのDUNEのリタのネタバレレビュー・内容・結末

ホドロフスキーのDUNE(2013年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

なんというべきか。
ドキュメンタリーを見たはずなのに
七人の侍を見た後の気持ちに似ている…。笑笑


とっても魅力的なホドロフスキー監督と
彼のパワーに吸い寄せられ集まった「戦士」達
による大作映画DUNE、が
ハリウッド相手に予算交渉失敗した話

プロデューサーの根回しが下手なのと
そもそも目論みが甘かっただけなんだけど
計画段階のエピソードがかっこよすぎて
ドキュメンタリー映画にできちゃったという…

いやー面白かった


ホドロフスキー元気すぎ
80超えてこんだけ若くてギラギラしてんだから
40半ばの当時なんかもう
見るからにやばい人だったろうな…笑

このドキュメンタリーの何が面白いって
いろいろあるけどつまりは
ホドロフスキーが面白すぎる

話が笑えるし
聞いてるうちに惹き込まれる
こういう人がカルトの教祖とかなったら
猛威振るいそうって印象

リンチの映画見にいった話は鉄板だけど
ラビタミンイー!の話が
ばかばかしくて笑っちゃう


それ以外も饒舌よ
運命にでも導かれるように集まる「戦士」の話に
いちいちときめいてしまったわ

こいつしかいない!と探し始めた
所在不明の伝説的バンドデシネ作家メビウスが
はじめの一歩目そこにいた、とか

ダリ以外に皇帝は考えられないけどどこにいる!?と
彼馴染みのレストランに行ったら偶然いた、とか

姿を見るのも難しいスーパースターミックジャガーが
パーティで人混みを掻き分けやって来て
自分の前に立った、とか。

盛ってるよね?とか思うけど
ホドロフスキーのキラキラお目目と語り口で
嘘言ってるように見えない笑


事前のリサーチ力とか人脈のお陰もあるか。

ダリやオーソンウェルズのエピソードでは
彼の交渉力に唸らされる。

才能を見極める目も抜群。

ギーガー、オバノン、クリスフォス、メビウス
後にハリウッドの重要人物になる才能を
ホドロフスキーが一人で発掘したというのもすごい話

絵コンテ制作中、監督は皆の前で毎朝演説した
と言ってたけど
そりゃ戦士達やる気になったろうと容易に想像できる

ピュアで情熱的で、この人なら何かを変えるかも?
と思わされるような話し方をする


でも、巨大な映画会社組織の体質は変わらなかった
という虚しい結末



ホドロフスキーが若い頃、組合に逆らったのを
ハリウッドは忘れてなかった

映画界の異端児と
ハリウッドのしがらみを分かってなかった仏人とが
巨額の予算が必要な大作映画を撮ろうとしたこと自体が
世間知らずで途方もない試みだった訳で…

そもそもがあり得る訳がなかった夢物語


けど、映画が芸術ならば
企画さえ良ければ実現されるべき

そうでなかったことをホドロフスキーは
札束を見て悔しがり、今も嘆いている




クリエイター達が命削って産んだアイディアを
簡単に盗んでしまう映画会社には呆れるけど

頓挫したDUNEは
ストーリーのラストと一緒だ、と
綺麗な瞳で話す息子に感動した

なんつー哲学的なことを言うの
このドキュメンタリーのまとめは
この息子の言葉に全て詰まってるよ


そして息子、最も不憫に感じたよ君を

思春期の2年間は長いよ。
その長い時間を費やした目標が突如消えるなんて
どれだけの喪失感だったろうか

「あの映画が出来ていたら
夢に見た人生を歩んでいたはず」と、
上映されていたら成功していたに違いないと
今も信じて疑わない姿に涙が出る…

なのにさ、ボロボロの父親を鼓舞して
「駄目だ!戦士ならリンチのDUNEを見ろ!」
とかさ
カッコ良すぎるよ……


ところでリンチのDUNE見たいなぁ面白そう
ツインピークスの人めっちゃイケメンだったんだな


ホドロフスキーのDUNEのポスターヴィジュアル
かっこいいー!
メビウスのキャラデザインといいサイケで最高

原作小説が生まれた65年から
撮影が計画された73年頃までの空気感たっぷり

2021年公開のDUNEとは
デザインが全く違ってる

作る時代が違えばセンスも変わる

だからキャスト含めて当然
未来永劫再現不可能なんだよね
ホドロフスキーのDUNEは



ヴィルヌーヴの「DUNE」を見て
最高…ソワソワして夜も眠れない、と
心の穴埋め程度の気持ちで見た
「ホドロフスキーのDUNE」

完全に心持ってかれてた
気付いたらレビューの点もこっちのが高くつけてる笑

心躍るドキュメンタリーだった
リタ

リタ