乾いた日常から離れてケニアでバカンス。異国の地でふと気づけば買春しちゃってたおばさんの話。
こういう倫理の向こう側にある悲哀を描こうとする人、おれ好きだなあ。正義や道徳では割り切れないもの、つまり「正しさ」とは別のところにあるなにかを描くためにこそ、文学や芸術や映画ってものがあるんだと、おれは思います。
だからこそ、主人公に対して「自業自得だろ」みたいなことを言うレビューが多いのにはちょっと驚くが……。どっちかというと詐欺に遭ったのは主人公の方だったと思うけど、そこらへんの文脈無視していいのか? いや映画を別にどう観ようとあんたの勝手だけど、少なくともこの映画って、そう演出されてなくないですか? 「常識」「倫理」「正義」なんてふわふわした言葉、そんな自明なモンじゃねえと思うよ、おれ。
おばさんが青年の貧しさにつけ込んでいるとしたら、青年はおばさんの孤独につけ込んでいる。愛しあうポーズだけして、実は見下しあっている関係性が悲しい。搾取はお互い様かもね。