KEKEKE

トム・アット・ザ・ファームのKEKEKEのレビュー・感想・評価

5.0
- 「そう、彼らは愛し方を学ぶ前に、嘘のつき方を覚える。 」/ ミシェル・マルク・ブシャール
- カミングアウトとは、それまで自分が嘘を吐いていたことを告白する行為
- アウティングとは、誰かが嘘を吐いていることを告発しようとする行為
- なぜ彼らが生まれた瞬間から嘘を吐き続ける必要があるというと、自分や家族、大切な人を傷つける社会から守るためだ

- そうやって始まった嘘のゲームには制限時間はなく、当人が死んでもなお続いていく
- 人生がどの方向に進んでも、最後は上記の2通りの結末しか用意されていない
- その間にあらゆる人間を巻き込むことでプレイヤーは増え、嘘は複雑化していく

- 事の発端は兄弟愛だった
- 兄が意中の人にドレスを渡せなかったその日から、弟は家族に嘘を吐き続けなければならなくなった
- 兄の世界のルールで実行されたその行為は、当人にとって純粋な愛であったが、弟にとっては外の世界のルールの強制であった
- 兄はルールを守るための方法を暴力しか知らず、弟は嘘しか知らなかった
- そうして始まったゲームは、弟の死後も終わることなく、周囲の人間に継承された

- トムはそのすべての目撃者である
- 嘘を吐き、吐かれ、守り、破る
- 目撃者が見た真実とは、田舎の嘘と都会の嘘である
- トムは選択することができる
- 喪失と補完
- 暴力と依存
- 農場に戻るか、都会に居続けるか、肝心なのは物理的な居場所ではなく、彼自身の心の居場所なのかもしれない

- 初グザヴィエドラン
- 事前知識なしで観たら牧歌的なタイトルからかけ離れた全く予想外のテイストで、思いがけず映画の正しい楽しみ方をしてしまった
- 話の根幹は凄くシリアスなんだけど、それを人間の狂気が覆ってサイコスリラー化していくところがシャイニングだった
- トムが兄に弟を投影していく様に、悲しさとエロスが同居していたし、母親が息子を想う気持ち、兄の屈折した愛情の表現が見事だった
- それを補強する道具や環境の使い方も完璧で、本当に力のある監督/俳優なんだなと思った
- 登場人物の心情変化の切り替えが映画的というよりかは演劇的なところに、戯曲の面影を感じた
- その分シャイニングと違って時間経過がかなり省かれているから、トムの狂気が唐突に感じられた気もした
- 説明的な映像は一切省かれていて、想像の余地が多分に残されている、かつ投げやりではなく丁寧に誘導されている感じ

- 人間は人に嘘を吐くことができるけど、コンプレックスはその人間の全身から滲み出てしまうもの
- 始めたゲームは最後まで続けろ
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