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トム・アット・ザ・ファームのaのレビュー・感想・評価

4.9
開始5分ほどで飽きてしまい食わず嫌いだったこれ。結果すげ〜〜〜〜萌えた、、

まず安定的にドランの美しいこと!それほど大きくない背丈、小柄な身体に不似合いなヘアスタイル。湿り気のあるブロンドから覗く、とろっとした瞳。
少年のようなあどけなさの渦に心地よく惹き込まれると、どぼんと彼の官能に溺れる、感じ。

息がかかるような(唇が奪われてしまいそうでどきどきする)距離で首を絞められながら「香水を? もっと締めろ もっと強く」「同じ匂いだ 彼の匂い 声も同じだ あの心惑わす声… 」こんな甘いふざけを嘯く、トムの健気さのようなもの。その愛らしさにフランシスがこれから徐々に絆されてしまうのでは?と期待した、しかし出会いの場面、はじめ首を絞めた時点からすでに彼はトムに妙に固執していたように思える。
わざとらしく架空の彼女に、恋人への愛を語らせたりなんかして、痛めつけて。(それさえトムは楽しんでしまうのだけれど!)
傷を甲斐甲斐しく手当なんかしてみせて、タンゴに誘ってみせて、「おまえのせいだ」とまた彼をぶつ。飴と鞭をうまあく使い分けるフランシスは典型的なDV男。トムはトムで、彼に触れられたところから熱が燻るように甘く感じられて一挙一動に感動してしまうし、タンゴのステップを軽快に踏みながら恍惚とさえ、してしまう。二人ともきっとばかなんだな。

トムの恋人の死がもはや序章にすらならないほど、この二人の愛(と呼べるのか)は滑稽で、美しかった。“ギョーム”の死の悲しさのあまり、空いてしまった家族の心の隙間へ入りこんだトム、の心の空白へも、狂気的な家族は入りこんだ。歪に入りこんだはずのそれは、悲しみの風化とともにしっとりと馴染んでゆく。

愛した亡きギョームがろくでもなかろうと、形見の時計を身につけ日記や写真を懐にしまい、彼の姿を見出したフランシスから逃げる。記憶の断片をふとした瞬間にご丁寧に連想しては、その可笑しさに震えるトム。気づいてしまった、閉塞した田舎のとうもろこし畑に隠れていた狂気に。しかし彼のもとでまた縛られたいと願ってしまうのでは…と怪しさを含みながら物語はエンドロール。トムは愛した彼のすべてを忘れて元の生活に戻れるのだろうか。

サイコサスペンス、にジャンル分けされてるようだけど観る人によってとても感じ方が変わるだろうなあ〜〜とおもった。
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