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激戦 ハート・オブ・ファイトのmatchypotterのレビュー・感想・評価

4.2
なんか久しぶりにスポーツ系の映画を観た。
香港の映画、マカオのボクシングと総合格闘技。総合格闘技が絡む映画ってなかなか珍しいのではないか。

そして面白い。良かった。
格闘技の壮絶さがあるアクションと、それを中心に剥き出しになって色んな人との関係を育むドラマのバランスがとても良い。アツい。

もともと武術に長ける香港、さすがと思える仕上がり。王道系で『ベストキッド』とかに近い。

その昔、ボクシングでチャンピオンに輝いていた男、“輝”、ファイ。
しかし、限界を感じたのか、八百長に加担し落ちぶれてただのおっさんに成り下がり、借金にまみれ、友人の紹介で住み込みでジムで手伝いをして生活を凌ぐ。

その住み込んだ家が別の母と娘の2人家族と同居の間借り生活。その親子がまた“ワケあり”。
しかし、それでも健気に生きてる親子で、その娘が活発で面倒見が良くて頑張ってて可愛い。

もう1人の男、リンスーチー。
親が実業家、いや、もはや成金の金持ち。しかし、一切父親の脛を齧らない彼は、生きる目的もあるのかないのか、放浪生活。

そんな時、突然、父親が投資に失敗して倒産。
たまたま見かけた格闘技のCM。優勝賞金。270万ドル。
彼は父親のために、経験もないのに賞金狙いで大会出場を目指し、そのファイが下働きしてるジムの門を叩く。

この“ワケあり”の両者、どころか、それぞれの背景にも別の“ワケあり”がある夢も希望もないような2人が初心者リンスーチーの願いを聞く形でコンビを組むようになる。

このコンビが生まれたことで、彼ら個々の人間性の成長が生まれ、2人の師弟関係に友情が生まれ、自分とそれぞれの背景とも向き合う強い力となる。

特にファイの同居親子との距離感、絆。
少しずつ上手くいき始めると何かに躓き破綻する。その度に傷付き、悔やみ、悲しみながら。

競技としての格闘技とは別の私生活における戦いがある。
対戦相手にも負けられないし、私生活や自分の人生にも負けられない。

この主役2人含め、ここに出てくる主要な面々は、既に1度はその“人生のリング”で負けてる人、もしくは、“人生のリング”から逃げている人。

そんな面々が繋がり、それぞれに作用して、負けてしまったことや逃げていたことに立ち向かう。

リンスーチーが戦う格闘技の大会でも10人勝ち抜きの熾烈な戦い。

格闘技でも、人生でも、“激戦”。
格闘家でも、格闘家でなくても人は皆、どこかで何かと戦ってる。勝ちもすれば負けもする。

戦わずして勝ちはない。前を向かずして前進はない。しかし、たとえ負けても、逃げても、挫折しても、生きてる限り終わらないのが人生。

だったら戦え、負けても戦え、逃げても戦え、挫折しても戦え、無様でも諦めるな、先がある限り食い下がれ、意志がある限り前を見ろ、下を向くな、その先にきっと何かある。
そう思える、アツく、強く、しぶとく、心に刺さる映画。

格闘技のシーンもガチバトルだし、めちゃくちゃタフな映画。すごいな、もはや、演出とかのレベルではない。

レビューの件数を見るか限り、まだあまり知られてない作品。掘り出し物と呼べる傑作に出会えて、めちゃくちゃ嬉しい。

これ、『ロッキー4』的に続編作られないかな。


F:1965
M:993
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