♪ ロマンスをこれから始めよう
化け物の見せられないところ
魅せて ほら ため息ひとつ
「映画においてセンスは何物にも勝る」
そんな気持ちにさせてくれる快作でした。
正直なところ、題材はB級です。
「フランスのある地方で旅行客が惨殺された。猛獣の存在が疑われる死因だったが、警察が拘束したのは一人の男性。はたして、彼が本当に手を下したのか…?」という冒頭からして娯楽臭漂いまくりです。
しかも、グロテスク表現は忖度無し。
大人の死体だけではなく子供の死体まで出てきますからね。リアリズムを突き詰めれば当然ですが、とても複雑な気分になります。
でも「そんなことは些細な話だぜッ!」
と思わせちゃう勢いとセンスが溢れまくっているんで、気付けばグイグイと惹き込まれるんですね。
特に良かったのがカメラの使い方。
いわゆるPOVという手法を用いているのですが、それに“こだわり過ぎていない”ので、メリハリが効いているんです。
また、配役もセンスが溢れています。
主人公のA・J・クックは、人権弁護士という役どころなのに、中途半端に色気を振りまいているため(というか僕が反応しただけかもしれませんが)ウソっぽく見えるんですよ。
このバランスがとても絶妙なんです。
彼女の方に引き寄せられると物語の主軸を見誤りますからね。適度な距離感が緊張感を持続させる…そんな好例だったと思います。見事です。
あと、彼女のアシストを行う二人の男性も良かったですね。一人は“元カレ”という設定なのに、そちらに引き摺られないので“甘ったるく”ならないんです。格式高い映画では出来ない判断が気持ち良いです。
そして、もう一人は目元くっきりの美形。
知名度は低いようですが、佇むだけで絵になりますからね。なかなかの存在感でした。
まあ、そんなわけで。
一部のCGに不満はありますが、そんなのは難癖とも言える超B級映画。先が読めるとか、ご都合主義とか等の難点を吹き飛ばす“センス”に刮目してほしい作品です。