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東京難民のgenarowlandsのレビュー・感想・評価

東京難民(2013年製作の映画)
3.7
『あのこは貴族』を観る前に比べたくて観ました。こちらはすごくリアルでした。原作福澤徹三、監督は社会派の佐々部清。    ふつうの大学生だったオサム(中村蒼)が、父親の失踪で身寄りがなくなり、学費も家賃も払えず世の中を知らず働くすべもなく、堕ちるところまで堕ちていく話。

甘かった大学生が経済的にもがき、社会の闇を知っていく。
悲惨なことに遭うたびに中村蒼が少しずつたくましくなっていくので安心して観られた。
社会科教育のような作品だった。

ネットカフェに住み、治験、即日払いのバイト…。

生きているだけでエライとホームレス(井上順)が言う。

オサムがそれまで貧しさを知らなかったから、貧しさから抜け出したい気力が湧いたのだと思う。ずっと貧しかったら抜け出す気力も生まれない。

大学の対応が酷すぎてそこは現実的ではなかった。学生相談室のない大学も今はあるのだろうか。相談できる良い友人関係を築いてこなかったのは本人の問題だが、不運が重なるともともと孤立した人が辿りうる道なのかもしれない。犯罪に巻き込まれなかったのは不幸中の幸いだった。バス停で亡くなった女性のことを思った。あの事件を知った時に胸が痛く涙が止まらなかった。

レールを外れたら二度と戻れない社会をリアルに描いた良作だと思う。

ここまで極端でなくてもレールに二度と戻れない作品を他にも観てみたい。実に現代的なテーマだと思う。
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