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危険な関係のodyssのレビュー・感想・評価

危険な関係(2012年製作の映画)
3.5
【セシリア・チャンがチャン・ツィイーを食っている】

原作は18世紀フランスで書かれた有名な小説。何度も映画化されており、日本でも藤田敏八監督が70年代に映画化しているそうですが、私は未見。
最近では韓国でペ・ヨンジュン(ヨンさま)主演で『スキャンダル』というタイトルのもとに映画化されました。それに引き続き、今回もアジア系の『危険な関係』です。制作は中国ですが、監督は韓国のホ・ジノ。主演男優も韓国のチャン・ドンゴン。中韓合作というわけです。

見ていると、1931年の上海が舞台。ちょうど満州事変が起こり、映画の舞台である上海でも反日運動が盛んになっていて、実際に筋書きにも反映されています。日本という国名は一部のシーンを除き明示されていませんが、何となく最近の日韓中の関係を思い出し、苦笑してしまいました。

それはさておき。書き割りや俳優の衣裳などはすごくゴージャスで、雰囲気は申し分なし。チャン・ドンゴンのプレイボーイぶりや、悪女を演じるセシリア・チャンの美貌が非常に印象的です。

これに対して、貞淑な未亡人を演じるチャン・ツィイーはどうでしょうか。見ていて、ややセシリア・チャンに食われているような気がしました。単に美しさの問題だけではなく、貞淑で亡き夫に忠実なはずの未亡人が、少しずつプレイボーイに惹かれていって、やがて陥落する、という過程が十分に表現されていない。これは彼女の演技の問題だけでなく、脚本の問題でもあると思う。ここがこの作品でいちばん大事なところなのですから、もっと時間をかけて丁寧に描かないといけないところ、やや性急に事が展開してしまう。

脚本の問題は他にもあり、セシリア・チャンのチャン・ドンゴンへの心理的に複雑な思いを、もう少しちゃんと表現すべきだと思う。最後に泣くシーンがやや浮いた印象になっていました。

上にも述べましたが、セシリア・チャンの美貌が際立っているので、チャン・ツィイーがやや食われている。派手目な悪女の美しさと、慎ましい未亡人の美しさ、それを二つともしっかり表現する、つまり双方の役にふさわしいタイプの異なる美女を二人揃えるのは難しいのだな、と改めて痛感しました。

韓国と中国で『危険な関係』が映画化されたので、日本でも藤田敏八監督の映画から35年もたっていることですし、だれか映画化しませんかね。
その場合、プレイボーイは阿部寛、貞淑な未亡人は絶対(笑)菅野美穂、美しい悪女は・・・・観月ありさあたりでいかがでしょう。
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