hanimiso

ミスティック・アイズのhanimisoのネタバレレビュー・内容・結末

ミスティック・アイズ(2011年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

静かだけどなかなかハードな1本だった。
明言はされないが見えてくることは以下の通り。

父親から暴力虐待されていた弟は、兄に守ってもらう過程で兄と性的関係に陥り、やがて共依存に。それに気付き「うるさく」苦言を呈した母親は兄が殺したのだろう。
暴力と背徳と支配のなか愛憎に振り回された兄弟は精神を病んだまま大人になり、別離を選ぶ。弟は軍隊に入りさらなる破滅へ、兄は過去を封印し平穏な暮らしへ。
物語終盤、行方不明になった弟もすでに兄に殺されている。誰より愛する弟の子種(だとこの時点では思い込んでいる)で妻はめでたく妊娠。しかし望んだ幸せな家庭が目の前にやってきた今、弟はもはやその幸せを壊す者、血の涙を流しても殺らねばならならなかったのだ。母親突き落とし、鶏殺しの件はその伏線。
ラスト、誰が我が子の実の父親か気付いた兄は、おのれの幸福を守るため、次の殺しを決意せねばならない...

といったところかと思う。
主人公3名の表情、微妙な台詞回しと間合いと声音の変化。役者も脚本も秀逸だからこそ、背景にあるものがしっかり浮かび上がってくる。邦題にもなったカンバーバッチの目の揺らぎは特に素晴らしい。
妻の視線の先を断片的に切り取ったカメラワークで静かな緊張とともに叙情感を盛り上げているのも、美しい自然のなか閉塞に息詰まるイギリスの田舎町という舞台に合っていた。
hanimiso

hanimiso