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それでも夜は明けるのよのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.3
こういう映画を観るたびに思い出すフレーズがある。

「だから迷惑についての議論はやめよう。それはすでにあるものだ。今さらそんなことについて話しても僕らはどこにも行けない」
(海辺のカフカ/村上春樹)

奴隷制度を「(黒人が白人に受けた)迷惑」の範疇に入れるかはさておき、それについての議論が「すでにあるもの」なのは間違いない。
黒人は可哀想で、白人のやったことは有り得ない。
それでもう決着が付いている。
だから、そのテンプレ通りの本作を観ても、観客は「どこにも行けない」。

どこにも行けないエンタメのために故人の十二年を良いように使うというのは、ちょっとどうなんだろう。
いかにも正義の側に立っているような作品だけれど、はたしてその作り手の姿勢は正しかったのだろうか。

真実を多数に発信するだけなら、ジャーナリズムでよい。
映画という形で金を稼ぐ以上、新しい論点を示すなり、人を楽しませるなり、自己を表現するなりの工夫は必須だろう。
社会的意義と映画の質は、分けて語られるべきものである。
よ