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それでも夜は明けるのiyu.のレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.8
殺意と絶望を募らせ、何処へも向けようがない湧き上がる怒りを堪えながらの観賞。最後までひたすらに凄惨でありました。

主人公が救われたからといって何も解決されていないことに誰もが苦々しさを覚えることでしょう。

過去に起きた繰り返してはならない歴史として、傍観者として、そんな立ち位置で観ることは許されなかった。笑いやユーモアも1秒だってない。感動作とありますが、他人事のように涙を流すことも許されないように感じました。

白人の非人道的行為を非難してお終い、ということには留まれず、自分が「この鬼畜たちと同じ人間である」ということの罪深さを感じずにはいられなかったです。時代やおかれた立場や常識が変われば、自分が平然と同じことをする可能性がないわけではないということに、背筋が寒くなりました。

浅はかで愚かしく恐ろしい生き物。人の上に下に人をつくらなくては満足できない生き物。人類の罪深さに茫然とします、。

私の中で2013ベスト3の「ヘルプ」という作品が同じ時代のアメリカ南部の奴隷制度を主に女性奴隷の視点から描いていますが、こちらも衝撃作でありながら、映画としてのユーモアや美しさも溢れかなり観やすいのでお薦めしたいです。

これまで数々の人種差別問題を扱った作品を観てきましたが、私が感じた憤りはあまりに生っちょろく他人事であったことを反省せずにはいられなかったです。暗く重いテーマですが、心に刻まれる作品でした。

劇中幾度も田畑で作業しながら唄うシーンが出てきますが、ソウル音楽の中に積み重ねられた悲しい歴史と重みを思い敬虔な気持ちになりました。音楽だけが唯一心だけでも解放され神と繋がり、人間らしく在れた瞬間だったのではと思いました。
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