MikiMickle

それでも夜は明けるのMikiMickleのレビュー・感想・評価

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
4.5
1841年 南北戦争以前の話。
音楽家として暖かい家庭もあり幸せに暮らす、自由黒人のソロモン・ノーサップ。
ある時、知り合いに騙されて、南部に奴隷として売られてしまう。
身分も変えられ、奴隷主から虐げられ、それでも愛する家族のもとへ帰ろうとする、12年間の奴隷生活を描いた作品。

本作は、そのソロモン・ノーサップの実際の回顧録に基づく実話。

監督は『Hunger』『shame』のスティーブ・マックイーン。

そもそも自由黒人とは何かというと、北部において、主人が解放したりした奴隷の子孫のことで、当時のアメリカにおける黒人の何パーセントかはいた。身分証明書さえもっていれば、白人と同じ立場が許されていたのです。だから、生まれながらに自由だった黒人もいた。
で、何故拉致されたかというと、当時はすでに海外からの奴隷輸入が禁止されていたため、内でそういった拉致があったのです。
主人公はその立場。


私は黒人奴隷の勉強をしてきたので、正直なところ、この映画では黒人奴隷の過酷さについては描き切れてないように思える。この映画も見るに絶えない切ない描写はたくさんあるんだけど、もっともっと過酷で、それをもっと伝えて欲しかったって気持ちはある。
しかしながら、この映画が本年度アカデミー賞作品賞を取ったということがまず素晴らしいことで、これによって、少しでも黒人奴隷の実態が世界の人に伝われればと思うのです。

南部の農業主とかは、奴隷を人だと思っていない。ただの所有物。ほんとに。
この映画のある農業主は、奴隷のペッツィーを愛しているんだけれど、だから性的なことも強要するんだけど、結局、物として見ているから、葛藤もありつつ、肉がえぐれるほど鞭で打ったりする。

ご主人様にそういった性的暴行をうけた女奴隷は山のようにいて、現在、アメリカにおける黒人は白人の血がながれている確率がかなり高い。

これを映画化するにあたってプロデューサーのブラット・ピットはかなり苦労した。製作会社がこんな重い題材の映画を作るのを拒否したから。
それでも、マイケル・ファスベンダーやベネディクト・カンバーバッジら一流のキャストが集まったのが素晴らしい事だと思う。

撮影のショーン・ホビットの映像も良かった。Hungerもそうだけど。


やけに冷静に書いているけれど、ほんとに心打たれる映画であるし、12年間のソロモンの苦悩がズシズシくる。
希望を捨てずに…なんて軽々しく口に出きる事ではあるけれど、それを感じることのできる映画です。
主演のキウェテル・イジョフォーの表情の変化も素晴らしいのです。

ただ、黒人の苦悩はまだまだ続く………
MikiMickle

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