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それでも夜は明けるのhaluのネタバレレビュー・内容・結末

それでも夜は明ける(2013年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

自由黒人である主人公が詐欺に遭い、誘拐されて奴隷にされる。
序盤船の中で脱走計画を立てるも失敗した後、船が着いた先で前のご主人様が迎えに来た奴隷仲間の1人が掌変えてめちゃくちゃ嬉しそうにご主人様に抱きつくシーンの衝撃。白人のご主人様もまるでペットのように撫で撫でする。

また、残忍な主人エップスから日常的に性的暴行を、夫人から肉体・精神的虐待を受けるパッツィー。おそらくエップスはパッツィーに恋愛感情を抱いているが、それとまた同時に白人は黒人を統べる者という彼らの常識のダブスタに苦しみ解離している状態。
観賞者側からすると、決してエップスに同情や良い感情を抱くことは無いが、黒人奴隷が居て差別や虐待するのが当たり前である白人優位主義社会で育った彼らの価値観を理解することなど不可能だと言わんばかりの心理描写が秀逸だった。

トムソーヤの冒険の作者であるマーク・トウェインのように自分の家の黒人奴隷に対して奴隷とは思わず兄弟のように育った、という家庭も少なからず存在していたようだが、そんな彼でも「奴隷が逃亡する」のは財産の窃盗よりも酷い犯罪であるという認識の時代。

結局、主人公も自由黒人の出で元々奴隷身分というわけではないので奴隷たちに仲間意識はなく、最後は最初にご主人に抱きつきに行った仲間の奴隷と同じように、絶望し倒れるパッツィーを振り返ることなく見捨て家族の元へと帰っていく。
色々考えさせられる映画でした。
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