せ

ウォルト・ディズニーの約束のせのレビュー・感想・評価

1.0
ディズニーによる捏造言い訳映画。
『ピーター・ラビット』を見た時と同種の衝撃を受けている。
よくこんな物を作ろうと思ったな。

まず。
P・L・トラヴァーズは死ぬまで『メリー・ポピンズ』の権利をディズニーに渡した事をずっと後悔していたと言われている。
プレミア公開の際に泣き通したのは本当にあんな形での実写化は望んでいなかった為で、その文句をディズニーに伝えようとするも無視され、その結果、後の舞台化の際には条件として「アメリカ人が関わらない事」と突きつけたほどだそうだ。
その彼女の言い分を、事もあろうにディズニー側が勝手に美談として脚色し正反対だったかのように見えるようにして剰え商業化するとはこれ如何に。

しかもだ。
この作品ではP・L・トラヴァーズをこれでもかというほど哀れで失礼な女性として描き切った。
幼少期に父との辛い思い出があった故に彼女は捻じ曲がってしまったのだ可哀想に、と言わんばかり。
そしてW・ディズニーは彼女と同じ悲しみを乗り越えてあの地位と名声を手に入れた人格者だと見せつける。
対比によって彼女を更に貶めているのだ。
こんなのあんまりだ。フェアじゃない。

その上、ディズニーはまるで彼女の心の救世主であったかのようなオチになっている。
違う。全く正反対だ。
恐らく彼女は晩年まで恥じたのだ。金なんて下劣な物と引き換えに大切な家族を売り渡した事を。

私は『メリー・ポピンズ』は素晴らしい映画だと思っている。
最初に物語を生み出してくれた原作者へのリスペクトがあった上でのあの形だったはずだと信じているからだ。
だからこそ、ディズニー側には彼女の批判を堂々と真正面から引き受け続けてほしかった。
それでもなお、素晴しいこれで良かったのだと思える、そんな作品だったから。
なのに当事者達が亡くなってから死人に口なしと言わんばかりに加害した側のシンパがこんな作品作って詰まらないケチをつけるなんて、本当に最低。
原作者の墓前で謝罪して。
せ