うめ

ウォルト・ディズニーの約束のうめのレビュー・感想・評価

3.8
 ディズニー製作の実写映画にはあまり期待していないのだが…今作は良かった。というよりも、なんだかんだ言われるし、自分も言うけれど、ディズニーって偉大だなぁと再確認させてくれた作品だった。

 まずはトラヴァース夫人の皮肉たっぷりの毒舌キャラが面白い。ディズニーランドを「ウォルト・ディズニーの金のなる木」と言ったり、ディズニーなのにアニメはやめてと言ったり…もう言いたい放題。その発言に共感できたり笑えたりするのだが、何より面白いのが、これをディズニー製作の今作でやってること(笑)自虐的に捉えたディズニーの姿っていうのが興味深い。さらにウォルト・ディズニーに関する描写でも興味深い部分があって、ディズニーにしてはなかなか新しい描き方だなぁと思った。

 ストーリーは、メリー・ポピンズの映画化を巡るディズニー側と作者トラヴァース夫人との攻防と、トラヴァース夫人の少女時代の回想が交互に語られるのだが…この演出がなかなか上手い。壮大なストーリーなどではないのだけれど、トラヴァース夫人の過去と現在を流れるように繋ぐことで、トラヴァース夫人に感情移入できるような演出になっている。また次第に明らかになるメリー・ポピンズに込められた想いにぐっと来るように仕掛けるのも上手い。最後の最後まで、その演出に完全にやられた。

 さらに付け加わるのが、キャストの演技だが…エマ・トンプソンが良い。あの知的な姿から繰り出される毒舌が堪らない。だが過去に苦しむ表情も見事に演じている。彼女じゃなかったら、今作はここまでのレベルに達しなかっただろう。あと、個人的にはポール・ジアマッティがいてくれて嬉しかった。

 今作は映画メリー・ポピンズの裏側を描いたものなので、もちろんメリー・ポピンズを観てから鑑賞して頂きたい。そして今作を観たら、もう一度メリー・ポピンズを観て欲しい。きっと見方が変わるはずだ。私も観返してみたい。

 ちなみに邦題だと、今作のテーマが伝わりづらいので、是非原題を確認して欲しい。見終わると、納得できるはず。
うめ

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