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大統領の執事の涙のよーだ育休中のレビュー・感想・評価

大統領の執事の涙(2013年製作の映画)
4.0
南部州ジョージアの黒人制綿花プランテーションで給仕係の奴隷として育った少年は、やがてホワイトハウスの執事として登用されることとなる。激動の時代、八名の大統領に使えた黒人執事の半生を描く、実話から着想を得て制作された作品。


(՞⸝⸝o̴̶̷̥᷅ ⌑ o̴̶̷̥᷅⸝⸝՞)ワァ...ア

  ちいよだ!

(ˊo̴̶̷̤ꑣo̴̶̷̤ˋ)ハア?


◆ We got two face.

実際に34年間ホワイトハウスで歴代大統領に仕えてきたの黒人執事Eugene Allen氏の半生から着想を得て制作された作品。2008年にBarack Obama氏が合衆国で初の黒人大統領に就任したことを機に、E.Allen氏の激動の半生がワシントン・ポストに掲載されたことで当時注目されたそうです。

南北戦争後も奴隷制度が残り続けたディープサウスで奴隷制大農園で黒人奴隷の子として生まれたCecil Gaines。幼少期に領主である白人一家の一人によって彼の母親は納屋で暴行され、父親は目の前で理不尽に射殺されてしまいます。法律は守ってくれないどころか、黒人に牙を剥くー。その後もジム・クロウ法によって人種差別が合法とされていた時代を生きたCecil。本当の顔と白人に見せる顔を使い分け、優秀な給仕として仕事に打ち込む事が彼の処世術となっていました。

主人公のCecilを演じたForest Whitakerは素晴らしい演技力で黒人執事の顔を演じ分けています。それだけでなく、34年間の歳月を経た晩年の所作にも違和感がありません。アカデミー賞をはじめ、数多くの賞に輝いた名優の演技が光っています。

︎︎︎︎︎︎☑︎ Dwight.D.Eisenhower(Robin Williams)
︎︎︎︎︎︎☑︎ John.F.Kennedy(James Marsden)
︎︎︎︎︎︎☑︎ Lyndon Johnson(Liev Schreiber)
︎︎︎︎︎︎☑︎ Richard Nixon(John Cusack)
︎︎︎︎︎︎☑︎ Ronald Ragan(Alan Rickman)

作中でCecilが仕えた歴代大統領を演じた俳優のキャスティングが非常に豪華であったことも嬉しいポイントでした。


◆ Darkness cannot drive out darkness.
ーOnly light can do that.

1926年にジョージア州の大農園で父を喪うショッキングなシーンから幕を開けた今作。そこから2008年にB.Obama大統領が就任するまでの期間を描いていますが、黒人執事である主人公の視点から84年の間に合衆国で発生した主要な人種差別に関する事件やイベントが大まかに取り上げられています。実際の資料映像が作中でも使用されており、合衆国の歴史に知れるとまでは言いませんが、興味を持つきっかけになります。(『フォレスト・ガンプ』でもそうでしたが、歴史的背景を知ることは映画を観る上で非常に有用だと痛感します。)

︎︎︎︎︎︎☑︎ エメット・ティル事件
···▸当該事件を題材にした、来月公開予定の『ティル』にも非常に関心が湧きました。
︎︎︎︎︎︎☑︎ リトルロック高校事件
︎︎︎︎︎︎☑︎ ジム・クロウ法とシットイン
︎︎︎︎︎︎☑︎ フリーダム・ライドとKKK
︎︎︎︎︎︎☑︎ 血の日曜日事件
︎︎︎︎︎︎☑︎ キング牧師とマルコムX
︎︎︎︎︎︎☑︎ ブラックパンサー党

やはり50年代から60年代にかけての時期は公民権運動の機運が高まっており非常に見応えがありました。70年代には当選こそ逃したものの、Cecilの長男Louis(David Oyelowo)が民主党下院議員候補として政治参加するに至っており、2008年時点では当選を果たしていた事が窺えました。どんなにひどい仕打ちを受けても声を上げ続けたLouisの忍耐力は、間違いなく父親譲りのものでしょう。


◆ America has always turned a blind eye
ー to what we done to our own.

黒人執事の視点から見た合衆国ということに加えて、本作では父子の確執という人間ドラマが物語に深みを与えています。

幼い頃に『白人の王国』を目の当たりにして育ったCecilは『二つの顔』を使い分けることで耐え忍んできました。そんな彼らの上品な所作や振る舞いは『ステレオタイプの黒人像を変えた戦士』としてキング牧師から評価されていました。

一方、奴隷解放宣言から百年近く経過し、公民権運動の機運が高まる時世を生きるLouisは、黒人の権利を主張するために危険を顧みず積極的に声を上げて行動を起こします。

絶対的に価値観の異なる父子が衝突。家族であるが故に「本心の顔」をさらけ出すCecilはとても印象的でした。そんなCecilが国家に対する違和感(自国の歴史の暗部から目を背けておきながら、強制収容所のような海外の歴史にはあれこれ口を出す)を覚え、次第に誇りを持っていた仕事に打ち込めなくなっていきます。そんな老年のCecilがLouisのデモに参加して、共に刑務所に収監されるシーンは微笑ましくもありました。


合衆国の歴代大統領から非常に好感を持たれていたことが辞職のシーンで仄めかされていましたが、それは「白人に向ける顔」を常に保ち続けたからであり、Cecilの驚くべき忍耐力に依拠するものであるということを一国の長たるものであれば気が付いて欲しかった。

遂に当選を果たした初の黒人大統領が演説で多用していたキャッチーなフレーズは、親しみやすさを演出し、聴衆を沸かすためのパフォーマンスだと思っていましたが、今作を観たあとでは「主語」が指すイメージがガラッと変わりました。


ーYes, we can.


𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄𓐄 𓈄
Dear.ちぃちゃん

カリフォルニア留学中に向こうの映画館で観た思い入れのある作品なんだけど、改めて観るとやっぱり全然理解できてなかったなって痛感したよ(꒪꒳꒪ )

最近人間ドラマを観ると昔より沁みる気がするんだよなぁ加齢かなぁ‎( ꒪ཫ‎꒪)