心の奥底に静かな正義を
これはこの物語を観て思った。セシルは幼い頃に正義なんて前面に押し出しても仕方ないものだと悟った。そして、白人に見せる顔と同胞に見せる顔二つ持てと言われ続けてきた。それは、彼が執事として働く上でどれだけ有利に働いたことか。
セシルの静かな正義は息子が体現してくれていた。公民権運動で積極的に活動する息子を最初セシルはよく思っていなかった。そしてそれは息子もしかり。しかし、息子はキング牧師を通して、セシルは自分自身で、お互いやり方は違えど、戦士だったのだと思い至った。
セシルの少しずつ老いていく描写は彼の心の奥底の積年の思いと相まってとても感慨深かった。
アメリカ史上、激動の時代を生きた大統領執事とその家族の物語であった。