グラッデン

スター・ウォーズ/フォースの覚醒のグラッデンのネタバレレビュー・内容・結末

4.6

このレビューはネタバレを含みます

エピソード1~3の主人公・アナキン・スカイウォーカーは、クワイ・ガン・ジンに「フォースにバランスをもたらす者」と見初められてジェダイへの道を進んだ。

エピソード7の監督であるJ・J・エイブラムスは、新たなスター・ウォーズの神話を紡ぐために「バランスをもたらす者」として抜擢され、本作のメガホンをとった。

彼のミッションは、世界中に熱狂的なファンを抱える大人気シリーズの30年以上ぶりの続編を、創造主に変わって作り上げることである。様々な意味で重みの増した車体を動かす作業は、相当なパワーが必要であったと思う。

だからこそ、公開前の段階で多くのファンは新作に対する「恍惚」と「不安」、前田日明の名言にも出てくる2つの思いが交錯しながら公開を迎えたであろう(当方を含む)。

自分なりの考えを述べれば、J.J.エイブラムスは見事に長年眠っていたエンジンを起動させ、物語を走らせる大仕事を成し遂げたと考えている。

理由は、本作が「継承」と「革新」という2つのギアの噛み合わせることに成功したからだと思う。正確には、その2つがなければ動かないものだと思うし、噛み合わせが悪くても車体を動かすことは出来ないと思う。

当方の考える「継承」とは、旧エピソードの登場人物の現在を描き、デザインの原点に立ち返り、過去の歴史(物語)との連続性を紡いでいった点である。

一方で「革新」とは、本作に登場した新たな登場人物・ドロイドの抜群の存在であり、ベールに包まれた新たな物語・歴史を提示した点である。

従来のファンを納得させる意味では、しっかりとした「継承」を実行するする必要があり、その上で新作に対する期待値を満たすための「革新」を引き出さなければならない。

そのボタンを掛け違えると、誰にも祝福されない内容が仕上がってしまうということは、近年の邦画・洋画における一連のリブート、リメイク、あるいは実写化された作品群を見ていれば一目瞭然であろう。

本作に対する評価を高めたのは、主人公・レイや新ドロイド・BB-8をはじめとするキャラの存在も大きい。いずれも、旧エピソードのキャラの面影を感じさせつつ、彼女たちなりの新しい魅力を提示していた。本作が同窓会のノリにならず、在校生を交えた式典として成立しているのは、彼らの力だと思う。

以上のように、当方としては本作に概ね満足している。故障はおろか崩壊にも繋がりかねない、新たな作品の起動という困難なミッションを乗り切った監督に感謝したい(ただし、次作のミッション難度も異なる意味で高まったと思う)。

鑑賞を終えて、すすり泣いた経験は初めてだと思う。このような映画体験をリアルタイムで体験できたことも含めて、非常に印象に残る作品だったと思う。