糸くず

スター・ウォーズ/フォースの覚醒の糸くずのレビュー・感想・評価

3.8
今年は「自ら選ぶヒロイン」の年だった。『マッドマックス 怒りのデスロード』『ターミネーター:新起動』『ヒロイン失格』。「選ばれし者」であることより、自ら選び行動することに意味がある。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』はそんな年のラストを飾るにふさわしい「自ら選ぶヒロイン」の映画だ。

たとえば、序盤、フィンとレイが帝国軍の攻撃から逃げる場面。手をつないで走ろうとするフィンに、レイは「自分で走れる」と言う。
あるいは、最後のカイロ・レンとの決戦。酒場では、ライトセーバーを手にすることを拒否したレイ。そんな彼女が、この雪上の決戦シーンでは、自らの意志でライトセーバーを手にして、カイロ・レンに立ち向かう。
レイは世界の潮流に合った魅力的なヒロインだ。

しかし、このバランスのよさ、そつのなさはJ・J・エイブラムスの短所でもある。彼の映画では、どうしようもない破綻は起きない。けれども、奇跡の瞬間が訪れることもない。

おそらく、JJ自身もそのことを自覚しているのだろう。彼は、カイロ・レンに、「選ばれし者」になれないことへの苛立ちと苦悩を込めた。正当な血筋、聡明さ、聡明であるがゆえにわかってしまう自らの限界。割れていく地面と走り去っていくレイを見つめながら、這いつくばって呆然とするカイロ・レンは、数々の大作シリーズにおいて「ちゃんとした」映画を作ってきたJJのダークサイドが映し出されている。
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