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ダラス・バイヤーズクラブの&yのレビュー・感想・評価

ダラス・バイヤーズクラブ(2013年製作の映画)
4.8
【2014/3/5:ヒューマントラスト有楽町】
これは最高だった!
人生に於いて何を選択するか、また何を選択し貫くことを以って真の「生きる」とするか、についての話。マイノリティへの偏見やアングラ組織繁盛記的な部分はシチュエーションに過ぎない。製薬会社に向けた「客が選択肢を見つけるのが怖いんだろ」という台詞が象徴的。
序盤、セックス・賭博・ドラッグに明け暮れ「いつかはみんな死ぬ」と諦観のフリをしつつも、事故った違法入国者への態度はロンの「生きる」ことへの態度そのものだし、AIDS発覚以降の生への執着こそ、本来の彼が真の「生きる」道を歩みだした姿なのだろう。皮肉ではあるけども。
「生きる」道を見つけてロンはほんの少しだけ変わる。あのスーパーマーケットのシーンはレイヨンへの友情表現であると同時に、偏見に満ちた過去の自分への三行半でもあるだろう。そしてそれがスーパーマーケットという消費と資本主義の象徴のような場で行われることが重要で。資本主義(に隷属した製薬会社)に囲まれて戦っている彼を、大袈裟にせずあくまで「ロンさんサイズ」で映画的に捉えた、この作品の印象を決定付ける良いシーンだった。
実在のロンもカウボーイなのかな。冒頭(3Pしつつも)落牛したカウボーイを見つめるロンの視座は、ラストで観客のそれに入れ替わり、そしてその先にあるものは。人生をロデオに擬え、「生きる」ことに必死でしがみつく様を捉えた描写が脚色か実話かは知らんけど、もうね。感動。
一回目の鑑賞ではガッデムマザファカ!言いまくってんなーとか思いつつ観てたが、二回目は序盤からもう泣きそうで。ああこれって本当は泣ける要素満載なんだ、と気付いた。この題材を安易にそっち側に転がさず、意図的な隙を蓄えつつ積み上げる、イイ感じなバランスに仕上げたセンスと手腕も素晴らしい。もちろんそれを体現したキャストも。言うまでもないけど。

新薬を手に入れた実在のロンは10年後の自分を追いかけてた、かなあ。マコノヒーのロンからは、そのくらい濃厚な生命力を感じた(主にお尻から)。
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