このレビューはネタバレを含みます
素晴らしい実話。
この話では、エイズ治療に効果のある薬が未認可だというだけで死を目前にしてなお使用することが認められず、副作用や毒性の強い認可の薬を使えという凄まじい矛盾を求められる。
子供でもわかるレベルの矛盾。
明らかに正しいと分かっていることが抑圧される理不尽。
話はずれるが世の中こういうことが多過ぎる。
結局利権が絡むと歪みが生まれてくるというだけのことなのかもしれないが…生きやすくなるべく進化を遂げてきたはずなのに実に生き辛い。
主人公のロンウッドルーフはその日暮らしの酒女ギャンブルドラッグを嗜むクソ野郎だったのだが、エイズがきっかけで別人のように変貌を遂げる。
最初は自身が生き残るために学び、薬を探していくのだが、それを密輸することで一大ビジネスを立ち上げる。(自身の命もかかっているし、ある種ついでとも言えるかも)
リスクをとって密輸した薬を捌き、なす術をなくした患者たちを結果的に救っていく姿は完全にメシア。(もちろん金はとるけど笑)
なので決して慈善的な気持ちで始めたわけでもないのだが、ロンが矛盾に立ち向かうことは結果として多くの人々を救う。
世直しだなと思う。
人に感謝などされることのなかったロンが、徐々に差別や偏見も薄れ、別人のように勢力的に取り組んでいく姿は「これが生きようとする」ことなのかもしれないと感じさせる眩しさがある。
泣ける。
稚拙だし他人事のようだが、「素晴らしい人がいたもんだ」と思う。
人と人との繋がりの素晴らしさも感じる。
何かのために、誰かのためにというよりはこの世の中が少しでも良くなるために生きれたら素敵だなと思う。
同時に、新型コロナウイルスが蔓延している現代にも通ずるものとして、とにかく偏見と差別だけは絶対になくなることはないんだなと思う。
そういう意味では人も世の中もクソ。
だけど良くなったらいいよね。
と、そんな寛容さと優しさを与えてくれる映画。