このレビューはネタバレを含みます
小説家志望者なら皆読んだ事のある「ベストセラー小説の書き方」のディーン・R. クーンツ
彼による『オッド・トーマスの霊感』が原作。
主人公のオッド・トーマスは死者の魂(幽霊)を見ることが出来る。彼のもとには殺された者達が殺された事を告げに寄ってくる。
彼は父親の警察署長であるワイアット・ポーター(ウィレム・デフォー)と連携し事件を解決している。ただしトーマスが「霊能者」である事は公には知られてはいけないので、それを隠すため常に苦労が絶えない。
ただし周囲の友人達には知られており「変人」扱いされている。街中に「霊」がおり、まるで友人のようにトーマスとコミュニケーションをとる。ただし会話は出来ないので心やゼスチャーを使う。
「霊」といっても日本とやはり感覚は違う。特にトーマスにしか見えない、半透明でビニールのような「ボダッハ」(凄惨な殺人事件を予知して群がる怪物)の「これでもか」というしつこさはやはりアメリカ映画だ。
トーマスは電的磁力という能力や犯罪者に対しては護身術で対応できるスキルもある。
ある日「ボダッハ」が大量に街に入り込んでおり、凄惨な殺人事件の予兆を感じるトーマス。どこかにその痕跡がないかを追求し始めアクションを起こす。そしてそれは髪型から「キノコ男」とトーマスが呼ぶ、いかにもあやしいボブ・ロバートソンをターゲットに追跡を始めるが結論は予想を大きく覆され警察官達も犯人だったという結末。
それより主人公を演じるアントン・イェルチンはいい雰囲気を持つ俳優なのに27才の若さで事故でなくなってしまっているのが残念だ。
クーンツらしいラスト。
トーマスは「霊が見える」が伏線になり、実は最愛のストーミー(アディソン・ティムリン)は銃撃戦で死んでおり、その現実を受け止めきれないトーマスはごく自然に霊と過ごしていた事が明かされる。
愛らしいストーミー役のアディソン・ティムリンはその後、成長するにしたがって、様子が変わってしまったので、23才で演じていている時が最盛期だったのかもしれない。
持って回ったところがなく一気にラストにまで行く構成はいいと思うし、来世のストーミーと会おうと考えるトーマスだが、この映画はほとんど仏教の生命観で構成されている(仏教の過去現在未来の生命観と輪廻)
キリスト教圏はそもそも「霊」を認めていないので、「シックスセンス」や「ヒア アフター」のように「霊が見えている事を認めたくない」世界観からみると、かなりアグレッシブになった異色な作品といえる。