眠人

17歳の眠人のレビュー・感想・評価

17歳(2013年製作の映画)
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輪郭がぼやけた遠くの景色を見つめるような主人公イザベルの物憂げな表情が強烈に印象に残った。

物語は浜辺で仰向けになる美少女イザベルの肢体をイザベルの弟が双眼鏡で盗み見るカットから始まる。見てはいけないものを見ているようで冒頭から居心地の悪さを感じた。

イザベルの両親は離婚し、イザベルは母親と義父、弟と暮らしている。絶えず男性の性的な視線に晒されるイザベル。表題通り年齢は17歳。肉体的にも精神的にも、大人とも子供とも断定出来ない、立ち位置がはっきりとしない不安定な年代である。言い換えれば、大人にも子供にもなれるということ。イザベルは自身の親と同世代の男性たちを相手としたセックスワークに傾倒することになる。客に自分が未成年だとバレないように、イザベルは母親のスーツを母親に黙って着用して出勤する。逆に、仕事が終わって帰宅する際には家族に勘付かれないように普段着に着替える。道中の回転ドアやエスカレータ、エレベータが変身装置(子供→大人、大人→子供)のように表象されていた。

イザベルがセックスワークを行うことには、実父の不在が影響しているのかもしれないが、それ以上にイザベルが抱く大人への憧憬が関係していたように思える。はたして、大人になるとはどういうことなのか。それは性行為を体験することなのか。自己の労働により正当な対価(賃金)を受け取ることなのか。イザベルは深く迷っていたように思えるし、僕自身も未だに自信を持って答えられない。
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