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そこのみにて光輝くのcinemakinoriのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.0




池脇千鶴の身体を張った怪演が“光輝く”衝撃作品。






〈チナツ〉
彼女のもつ言い知れぬ悲哀に溢れたエロさと母性と強さと弱さ
“そこ”に翻弄される“そこ”にいる男たちの
“そこはかとない”生き様や、“底辺”クズ男のマウンティング。

重たく暗くシリアスな貧困リアリティ。
延々と、そして淡々とソレらの生臭くも普遍的な日常を観させられるこの作品のメッセージに、軽々しくも共感出来るなどとは言えないが、不思議と作品の叫び声とも言える何かが“そこ”からこちらへ付着して離れなくなる余韻をべったりと塗りたくられる粘着的なパワーを持っている。


流石、
【君はいい子】の呉美保監督作品だなぁと納得がいく。



〈タクジ〉
菅田将暉が役者としての才能を存分に引き出されたこの男こそ、本作では間違いなくキーマンとしての存在意義が余りにも大きい。
“そこ”から這い上がり、“そこ”にある愛を守り貫き“底力”の照準がどうしても合わない不器用さと危うさ。

切なく辛くもコミカルなキャラクター。
だからこそ余計に絵になる愛らしさと憎めない男。
“そこ”で“そこ”を選択してしまうなんて、、、胸が苦しくて呼吸出来ない位にしんどかった。


〈タツオ〉
元来持つ責任感の強さと不器用さを上手くコントロール出来ない男を、少ないセリフながらも天性のオーラで綾野剛が好演。

贖罪にも近い自己責任の末路がアブサーディティ。
この物語で、ある意味一番まともな人間としてセッティングされてはいるものの、責任感の強さや漢らしさが併せ持つ脆さや繊細さ。
“そこ”から溢れ出る情けや愛や葛藤は、“そこ”にある一つの運命として彼自身の大きな大きなターニングポイントとなる。
“そこ”のみにて彼は光輝き、彼女もまた光輝き、家族という光が揺るぎない“底力”になることを強く強く差し込んで教えてくれる。


何故に“そこ”が平仮名なのかの疑問と解消が、観ていくに連れてさざ波の如く訪れる奥深くも儚くて美しい作品。
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