シトリン

そこのみにて光輝くのシトリンのレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.7
キネカ大森で再上映されているので再投稿。

10年前の映画だけど名作は色褪せないという感想。

時が経つと腐っちゃう映画多いと思うけど、ずっと生きていると思う。
函館で達夫も千夏も拓児もずっと生きている。

原作はバブル期に取り残された家族の話で、貧しい一家を長女が売春をして支えているが女性進出社会となり、仕事が選べる現代では通用しない部分が出てくる。
雰囲気だけは崩さず無駄な説明台詞もない。
設定を上手く作り上げ新しすぎず古すぎずの作品に仕上がっているのも大きいと思った。
「携帯出れや」と火野正平が言うけど、携帯電話の存在を匂わせながら一切画面に映さないのも良い。

やっぱりこの映画は役者が凄い力を発揮している。

綾野剛
この色気を今の30代前半の俳優が出せるだろうか?佇まいだけで伝わる何かを背負った男。生きた心地のしない表情と哀愁。
酒に溺れて顔が浮腫んで人間臭い役柄。
これが出来る俳優が今は本当にいないと思う。
貴重な存在なので是非ともその枠を背負って生きてほしいと思う。

池脇千鶴
言うまでもなくもうずっと凄い人。
娼婦でありながら無垢でピュアな表情を出す。
普段脇役で光りつつヒロインになると一気に力を発揮するので、エグいぐらいに心に入り込んでくる。容赦ないのが彼女の演技。醸し出す雰囲気やラストシーンの表情は彼女以外絶対出来ないと断言したい。

菅田将暉
若さから来るパワーとその反面ハタチとは思えない貫禄のある演技が凄すぎて。
可愛くて人懐っこいキャラクターではあるけど、後半はそのパワーを怒りという形で発揮するので、観ている側はどぎまぎする。

菅田将暉はこの映画で初めて自分の演技を認めることが出来て作品が純粋に面白かったとインタビューで話している。
それは"自分が好きな役者しか出ていない"事が大きいと。

他、高橋和也、伊佐山ひろ子、田村泰二郎、火野正平…

だれも欠かすことが出来ない素晴らしいキャスティングだったと思う。