大道幸之丞

そこのみにて光輝くの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

佐藤泰志の描き下ろし作品。佐藤泰志は自死を選んだ作家で、没後は全作品が絶版だったが、復刊もなされ、佐藤作品に触れた、函館のミニシアター「函館シネマアイリス」支配人の菅原和博が中心となって、「市民映画」の形で佐藤泰志作品を映画化し続けている。

本作は「海炭市叙景」に続く第二弾映像化作品だ。おなじ函館が舞台であるせいか、ドロップアウト作品のように世界観が近い。違和感がない。

普通に考えたら底辺の家庭で姉が池脇千鶴で弟が菅田将暉の家族などあるはずがない。——いやいや。そこが「映画」なんですよお客さん。

綾野剛をはじめキャスティングがいい。特に高橋和也は「ハッシュ!」なども含め「演技派」の本格的な、日本の映画界に不可欠といってもよい存在になっている。

ただ拓児がなんで祭りのあのタイミングで突然キレて中島を刺すのか唐突に感じた。持っていき方がうまくない。

底辺に生きる者たちは「ぬか喜び」を恐怖する。どんないい話があっても鵜呑みにせず猜疑心がまずはたらく——など、もう「世間から置き忘れさられたような函館という町」の片隅に生きる一片の若者たちの物語として、よいと思う。

ただし佐藤泰志作品は独特なので初めてなら「オーバー・フェンス」や「きみの鳥はうたえる」あたりから観るのがいいと思う。