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そこのみにて光輝くの346のレビュー・感想・評価

そこのみにて光輝く(2013年製作の映画)
4.0
オーバーフェンスを観る前にということで、ようやく観た。

綾野剛ってこんなに華があったのか。
なんか、最近の力んだ芝居ばかりみてたから、ちょっとびっくりした。

池脇千鶴はほんといい。
ほんとにいいのだけど、狂気が足りない。でも、だからこそ、この映画にはぴったりなのもある。千夏という名前とは裏腹なキャラクターの、感情を殺して生きてきたすべてが、皮下脂肪とズボラな表情に出ていて、この映画においてのマスターピースだった。もっと言えば、千夏はこの映画の背景そのものであり、だからこそ、その背景を切り取り、命を与えたかのようなあのラストシーンは美しかった。綾野剛演じる達夫は、最後まで影であり、彼女を照らす光を背負った男なのだな。

少しだけ、細かいことを言っていいなら、菅田将暉の演じる拓児が良すぎて、もっと彼の演技に頼った脚本に変えることができなかったかな。高橋和也さんも素晴らしい役者さんだから、中島という人物をもっと抑えた憎まれ役で演じることが出来たと思う。そうすることで、菅田将暉の演技だけで中島の本性を描くことができるなら、映画で描かれる中島とのギャップによって、拓児の多感であるがゆえに不器用にしか生きれない悲しいキャラクターをより印象づけることができたし、その後の達夫とのシーンもより情感豊かなシーンになった気がする。

もちろん、そのほうが難しいのだけれど、この菅田将暉ならやれるんじゃないかと思うぐらい素晴らしかった。
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